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それもまたひとつの運命

「アキラ!今日も朝会ったね~!」 クリーム色の髪の毛を靡かせて、下から顔を覗き込まれる。さすがは運命の番。発情期でもないのに、強いフェロモンを撒き散らしている。いや、通りすがりの奴等は特に反応していないし、αと思しき奴等がチラチラと見てくるくらいである。 こうして、このΩと会うのもコイツが待ち伏せしているのではないかというくらいの頻度だ。どれだけ時間をずらしても遭遇する。前に待ち伏せしているのか、と聞けば「そんなことしていない!」の一点張りなのでもう放置している。 Ωということがバレたくないサクのために、家を出るときは別々にしていたのが悪いのか。 「会ったのはしょうがないけど、別に一緒に行く理由もないだろ」 ひどいー!と言ってぶんぶくれているのを完全に無視して置いていく。こうでもしないと、いつまでも着いてきてしまうのだ。 「君、Ωでしょー?かわいいね!」 「えっ」 「これから俺達と飯行かねー?」 「いや…」 振り向くと、ガタイの良い男たちがソイツを囲んでおり、困り果てた顔をしている。 (…しょうがねえな…) 深い溜息を吐いて頭を乱暴に掻く。なんで、俺がこんなこと… 「おい、お前ら、退け。邪魔だ。」 「げ、昼田のツレかよ…行くぞお前ら」 こちらは知らないが、どうやらコイツらは俺のことを知っているようで、顔を引き攣らせて退散していく。こういう時は便利なのが、この広い顔だ。 「…お前、自分でこういうのなんとかできるようになれよ」 そう言うと、目をキラキラさせて嬉しそうにまた付いてくる。 「お前じゃなくて、周って呼んでってば~!東野 周(トウノ アマネ)っていう立派な名前があるんです!」 「呼ばねえよ」 まあ、また変な奴に引っ掛かって俺がモヤモヤするよりはいいか…とそのまま放置してしまう。結局毎日この繰り返しで俺はコイツと登校するはめになっているのだ。 (はあ…サクの匂いが嗅ぎたい…) 運命の番とはなんなのだろう。俺には、まだよくわからない。この匂いだって、別に好きじゃないし、なんならサクの匂いの方が全然いい匂いだ。サクの首筋に埋まる妄想をするだけで、勃起してしまいそうなほど。まあ、今は外なので我慢だ。 早く帰ってサクとラブラブしよう…そう思えば、今日一日も乗り越えられる気がするのだ。 *** 「船津、おはよう」 大学に久しぶりに来た気がする。単位が余裕なためにかなりゆったりと発情期の間は休ませてもらった。船津に会うのも久しぶりだ。 「あ、月影おはよう」 案外普通の様子の船津に一瞬きょとんとしてしまう。別にコイツが言いふらすだなんて思ってはいないが、少なくとも、どういうことか聞いてくるだろうと思っていたのだ。 俺が一瞬固まったことに気がついたのか、いつもチャラチャラとした船津が穏やかな顔をして笑った。 「まあ…驚いたけど、お前はお前だしな…」 「……お前」 「良い奴だったんだな……」 「いやもっと前から気づいて!?」 コイツが友達で良かったと、思ったのは今回が初めてではないといつ伝えようか。今はもう少し、いじってやろうかな。

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