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その正体は、俺の想い人である千晶 新(ちあき あらた)だった。普段驚く程に無表情な千晶は今日はどこか荒々しく、その爛々とした瞳は俺には眩しくて、ついその強い視線から逃げるように身体を捩る。 「…っ、、っなんのつもりだ。」 なんとか絞り出した己の声が、震えていることに気づいた。 「……会長こそ、なんのつもりですか」 なんのつもりってなんのことだよ。俺こそお前に聞きたいことがあるのに。 「なんの、つもりって」 「会長が、俺を避けるからじゃないですか」 千晶のその欲の篭った瞳とは対照的に無機質な声を聞いて俺は戸惑う。避けたからってなんだって言うんだよ。お前にはあのマリモがいるだろう、俺と関わんな、期待させんな。 「………べつに、避けた覚えはない。仕事が忙しかっただけだ」 咄嗟に出た言い訳に、俺を拘束する手の力が強くなる。 「嘘ですね、依田(ヨリタ)先生に確認したので」 千晶は責めるように俺に詰まる。憎きホスト教師のせいで俺の完璧な言い訳は論破されてしまう。普段仕事もロクにしないくせに、余計なことばかりしやがって。 「お前に会いに行かなくたって、別にいいだろう。お前だってその方が良いんじゃないのか」 俺から出てきたその言葉は、実に嫉妬に滲んでいて自分で言っていて恥ずかしくなる。何を言うんだ、この口は。まるでお前が好きだと言っているようだった。 「………俺はアンタに何かしましたか」 …………なにかしたって?千晶の何かに縋るようなそのずるい聞き方に、俺は喉奥がカーッと熱くなる。 「なにも、してない。」 「なにも、してないよ。俺が、おれが悪いんだ。おれがお前をすきになってしまったから」 枕が濡れて自分が泣いていることに気づいた。 泣くな、泣くな泣くな。 「………かいちょ、「見んな」」 俺の体を仰向けにしようとする、大きな手を払いのけてそのまま枕を抱き込んだ。やめてくれ。 「悪かった。もう、近づかないから、ゆるしてくれ」 そう言った瞬間、俺の背中は大好きな人の温もりに包まれ、耳元に吐息がかかり思わず、ビクッと反応してしまった。 「抱かせてください」

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