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フタリノキモチ

気持ち悪いとは思うけど、隆が好きなんだと彼に言われたのは高校生の時。 一番近くにいた貴教からその言葉を聞いた時、僕はとても驚き、そんな目で見てたのかと正直引いた。 だけど僕は貴教を遠ざけたりしなかった。 イケメンで背も高く、賢い彼が僕を好きだなんて。 なんとも言えない「優越感」を覚えた。 友達以上恋人未満。 そんな状態を大学入ってまで続けていた。   僕は貴教が嫉妬する様なことをワザとして、嫉妬する彼の様子に悦に入っていた。 それは恋とか、愛とかじゃなくて。 貴教を操っているという優越感以外なんでもなかった。 だからバチが当たったのかもしれない。 気がつくと貴教は僕の側から離れていった。 いつも隣で講義を聞いていたのに、いつの間にか隣は空席だ。昼メシも一緒に食べなくなっていた。 ある日見かけたのは、僕の知らないヤツと楽しそうにしている貴教。 そいつと一緒に講義を受けているところ。 僕はその時確かにヤツに嫉妬したんだ。 貴教が離れて気づいた。 僕もまた彼を見ていたんだと。 単なる優越感だけではなかったんだと。 もう、今更だけど。 掛け違いをしてしまったボタンのようだ *** 「貴教、アイツずっと見てる。すげー怖ぇんだけど」 隣で講義を受けている貴教に徹がコッソリ話しかける。 「大丈夫だよ。隆は殴ったりしないから」 「アイツも怖ぇーけど、お前も大概だな。ワザと嫉妬させるとか」 あー怖い怖い、と徹が頭を掻いた。 「隆がなかなか自分の気持ちに気づかないからねぇ」 シャーペンをくるくる指で弄びながらチラッと隆の方を見る。 (いい加減、気がつけよな…。俺を好きだってことに) 今日あたり、そっと近づいてやろう。 多分もう隆は俺に落ちるだろう。 貴教はふふっと笑った。 【了】

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