42 / 191
【10】-4
「それは、我が社の……『ジュエリーSHINODA』の最新作『サンドリヨンの微笑』に間違いありません。発表は来月ですが、すでにプロモーションビデオの準備もできている……」
「ほう……」
「拾ってもらった礼は十分にさせていただきます。だから、そのネックレスは返してください」
一転して冷静に告げ、「お願いします」と頭を下げる。
仕入れ値や納期などで厳しい頼み事をする際、落としどころを見極めた時点で拓馬が取る方法だ。ここぞという場面で仕立てに出て、決着を図る。
だが、周防はあっさり言った。
「断る」
(うわ……、せ、性格悪わる……)
「この……っ」
拓馬の怒りが爆発寸前まできている。まずいぞ、と思った時、周防が笑いを含んだ声で言った。
「そんなにカッカしなくても、いずれちゃんと返すと言っている」
「いずれって、いつだよっ」
「さあ……」
周防が言い、ギリギリと歯を噛む拓馬にひょうひょうと告げる。
「シンデレラ次第かな」
「シンデレラ……?」
「うん。僕にこれを残したシンデレラが、直接受け取りに来てくれるなら、その場で返そう」
「え……?」
声は玲の口から漏れた。慌てて両手で口を塞ぐ。
「埒 が明かないな」
拓馬が吐き捨てる。
「だったら、いいさ。取りあえず、あんたが保管してくれてることはわかったしな」
返すと約束し、それまでの間保管してもらえるなら、それはそれでありがたく受け止めておくと言い捨てる。
ともだちにシェアしよう!