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モテ期到来 6
「あ、あっ、もう無理……んっ、あっ」
「イってもいいよ」
優しい声が響き、ものがさらにこわばる。
腰を打ち付けながらもゆるゆるとした手の動きは止めてくれなくてさらに身体の奥から大きな波が来る気がした。
「っ、あああだめっ、そこ、だめっ」
「千秋、イって……」
とろっとした甘い声でささやかれると腰の裏がぞくぞくした。
電流を流されたようなそれが耳から脳へと伝わり、肌を走り、つながった奥と硬くなったさきに到達するころには、自分でも信じられないと思うくらいにあまったれた声をあげていた。
「いくっ、いくからぁ」
「いいよ……」
「あっ……あ! あぁっ!」
弱い部分をしつこく責められて、思わず息を呑み不規則に腹部が痙攣して一気に弛緩した。
耐えきれず勢いよく飛び散った白濁が腹を汚すと、修平は満足そうに目を細め、今度は角度を深くしてさらに腰を打ち付け始めた。
「あっ、あ、ま、まって、今イったから、ああっ」
「うん、だから僕もイキたい」
「やっ、あっ、むり……イったばっかぁ、ああっ」
修平は俺の喘ぎ声ごと塞ぐようにキスをして、激しく揺さぶりながら舌先を甘噛みする。
「ん、んんっ……」
さっき放ったばかりの熱がまた再び大きくなっていくのを感じながら修平の背中にしがみつくと、修平のがさらに奥へと腰を強く押し込んでくる。
──そういえば、今日帰りにこんな話を聞いたっけ。
『新藤くん、彼女とバレンタインデートかな?』
『いいなぁ。きっとさ、お洒落なカフェとか行くんじゃない?』
『で、カフェの後は高台の公園とかで夜景見ながら手を繋いだり』
『夜景見ながら帰り際にキスとかするの! やばー!』
キャッキャと騒ぎながら想像されている修平は紳士的でいかにも理想の王子様のようだったけど、現実はこんなにも欲望にかられた目をして俺を欲している。
紳士的なイメージを持ってる女子たちには悪いけど、きっとこの顔は俺しか知らない。
俺だけのものだ──。
内部はもうどちらのものともつかない体液が混ざり合い恥ずかしいくらい音が響いていた。
チョコレートの香りと、汗に滑る身体ももう境目をなくして、溶けて混じり合うような錯覚に頭が真っ白になっていく。
「ちあき……っ」
ベッドが騒がしい音を立てて軋み、激しく揺すぶられながら修平が俺を抱きしめたとき、荒々しい吐息が耳をくすぐり、呻くような声で名前を呼ばれ、中の修平の質量が増した。
「あっ、しゅうへ……おれ、またいく、イクっ、んっ──……!」
修平は貪るようにキスをしながら深々と挿入したままぶるりと大きく震えた。
駆け上がる快楽と腹の中に生温かい感触を感じた瞬間、思わず身を震わせ、俺もまた粘った白濁を吐き出していた。
**
「ケーキ、もう一口」
修平に好き放題された俺は横になったままケーキを頬張っている。
「お前のベッドをココアパウダーまみれにしてやるからな! 覚悟しろ!」
修平はクスクス笑いながらまた俺にケーキを食べさせ、自分は嬉しそうに板チョコを割って口の中に放り込んだ。
「お前はケーキ食わないのか? このままじゃ全部食っちまうぞ」
「全部食べてもいいよ。僕は千秋から貰った板チョコがあるから」
「……つか、今更だけど。板チョコでごめんな」
修平は目を細めると、気にしないで。と言いながらベッドサイドに座って俺の髪を撫でた。
「僕は千秋から貰えるものなら何でも嬉しいんだから」
その柔らかい眼差しがくすぐったくて、思わず目を逸らしてしまったけど。
今年のバレンタインはやっぱり違う。
思い描いてたモテ期到来……とはいかなかったが、嫌ってほど本命チョコを貰った気がするから。もう腹一杯ってくらいに。
「千秋、もう一口食べる?」
「……食う」
修平はスプーンに乗せたケーキを食べさせると、また俺に優しくキスをした。
《モテ期到来・終》
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