87 / 110

第54話+α

帰ってくるとなおがクローゼットの前で仁王立ちして構えていた 何してるんだろう? 声をかけると服を選んでいたという 会話の流れで樫渚に私の実家があると知っていることがわかった あぁ、文君辺りにでも相談したのかな 彼なら察してそうだ 2人で食卓についたとき家族の話になった 「伊織のご家族ってどんな人たち?」 なおの質問に樫渚にいる両親を思い出す 仕事優先の忙しい人たちではあったものの、授業参観なんかは時間が取れたら来てくれていた 「母親は、よく管理職までなったなと思うくらい抜けている人ですね」 「お父様は?」 「んー、父は......物静かで優しい人ですかね」 書斎に入り込んでは、よく本片手にいろんな事を教えてもらった 「伊織って、ひとりっこ?」 「いや、兄が2人いますね。そっくりだとよく言われるかな」 「かっこいいんですね。きっと」 うっとりしだした恋人にちょっと複雑になってたまらず口を出した 「......ダメですよ。なおは、私の恋人です」 「わかってますよ!伊織だけです!」

ともだちにシェアしよう!