「はじまるよ、はじまるよ。はじまるよったら、はじまるよ。い〜ちとい〜ちで、にんじゃだよ、ドロン！」 ２００８年９月２９日、秋雨前線のの影響で雨が降り注ぐ大阪のある保育園では自由遊びの時間は絵本のようだ。 　ライオンのエプロンを着た赤毛のパーマの男性……燈野良太郎(とうのりょうたろう)が手遊び歌で園児を呼び寄せていた。 ２人の女性保育士の手助けにより園児が良太郎の前に集まってくる。 「はじまるよ、はじまるよ。はじまるよったらはじまるよ。さ〜んとさ〜んで、ねこのひげ、ニャン！」 歌に合わせて園児も猫のひげを顔につける姿に癒される良太郎は穏やかに微笑む。 専門学校を卒業後、きらり保育園に就職してから５年目の２５歳の良太郎は３歳児のクラスを受け持つようになった。 あごの左側に大きいほくろがあるのが一番の特徴で奥二重の瞳の団子鼻、下唇が薄くてえくぼがはっきりと出るし、顔がすぐ赤くなる。 いたずらされても笑って返す器量があり、ギャグをして園児を笑わせる面白い一面もある。 　「はじまるよ、はじまるよ。はじまるよったら、はじまるよ。ご〜とご〜で、てはおひざ〜」 園児たちが開いた手をひざに置いて、良太郎をじっと見つめる。 「今日のお話は『どうぞのいす』です。はじまりはじまり〜」 さぁ、彼のお話も始まりますよ。