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赤
雨足がより強くなってきたから、近道で細い路地へと入った良太郎。
大通りとは違う街灯の少なさで辺りは暗い。
それでも、この雨から早く逃げたいという思いの方が強く、早足で歩く。
しばらく歩くと、黒い何かが道の真ん中で動いていた。
時折細い棒が見えてはなくなり、また見えてはなくなりを繰り返している。
「何してはるんやろか?」
普段は出さないようにしている関西弁が漏れているのを気にせず、進んでいく良太郎。
まるで、大工さんが金槌を振り上げて、勢いよく釘を打っているようだ。
今度は耳を澄ましてみる。
ーーザクッ
何かを刺す音。
ーーピチャ
水が飛び散る音。
ーーアハハッ
誰かが笑っている声。
「えっ……」
びっくりした声と同時にライトが照らされた。
ーーその瞬間、景色が変わった。
目の前に見えたのは赤、赤……赤。
伸びた足の先は赤いハイヒール。
赤いワンピースを跨いだ青色のパーカーの背中に赤黒い手形が大きく残っている。
そして、青色のパーカーの誰かがひたすら赤いワンピースの胸元を何度も刺していた。
その血が突き上げるたびに、飛び散る。
刺されている本人は目をひん剥き、口が緩く開いたままだからこと切れている。
それなのに、楽しそうに笑いながら突き刺し続ける青色のパーカー。
「ひいっ、なんで……」
良太郎は叫び声を上げ、身体が震え出す。
力が抜けたからか、傘が倒れ、雨が容赦なく良太郎を突き刺し始めた。
「父上、母上……」
あいつがあなたたちの命を奪ったのですか、と続けたかったが、怖すぎて声が掠れた。
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