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再会

「久しぶり。僕のモリー……」  錆びた鳥籠から放たれていた歌声が途絶える。何が久しぶりだとエドワルダは思いながらも、鳥籠の扉をあけてこちらへと入ってくる彼を見つめた。  黒い外套を羽織った青年がエドワルダの前にいた。翠色の眼はそのままに、高くなった体からは以前のような中世的な美しさではなく、若々しい逞しさも感じさせる。栗色の長くなった髪は無造作に後方へと結われていた。 しばらく会わないうちに随分と様変わりしたなと思う。自分の伴侶であったその人をまじまじと見つめながら、エドワルダは青いペチコートの裾をあげ、ドロワーズに包まれた足から蹴りを繰り出していた。 「いてっ!」  間抜けな声をはっしながら、ロビンは鳥籠の底に体をぶつけてみせる。そんな彼に冷たい眼差しを送りながら、エドワルダは言葉をはっしていた。 「なんで死人が歩いてるの。僕はたしかに君を殺したはずだぞ……」 「マダムが……僕を逃がしてくれたんだ……」 「どこに……」 「新大陸……マダムもそっちにいるよ……あっち側でもコーヒーハウスは大活躍だから」  呻きながら、ロビンが口を開く。蹴られた脇腹を押さえながら呻くロビンを見つめ、エドワルダは大きく眼を見開いていた。 「別に新天地で新しい店を開くことないだろうに……」  苦笑が顔に滲んでしまう。ああでも、あの人らしいやとエドワルダは思った。古い秩序が支配するイギリスではなく、マダムは新しい価値観の跋扈する新大陸を新たな拠点に選んだのだ。 「たっく、ロビンのことだって僕に言ってくれればいいのに……」 「僕に君をとられて、悔しかったんだって。だから、これは軽い嫌がらせだってさ」  そっと立ちあがり、ロビンが微笑んでみせる。会ったとき見せていた冷めたような表情はそこにはもうなかった。  あるのは、真摯に自分を見つめる一人の男性の視線だけ。  そっとロビンはエドワルダの手をとり、その手の甲に口づけを落とす。顔をあげた彼は、はにかんだような笑みを浮かべて言葉をはっした。 「エドワルダより、エドワードって呼んだ方がいいかな。僕が愛してるのは、女性としての君じゃなくて、君そのものだから」 「エドワルダでいい。エドワルダも大切な僕の一部だよ……。ロビン……」  青い眼に笑みを浮かべ、エドワルダはロビンを抱きしめる。戸惑うように視線を惑わせながらも、ロビンはそんなエドワルダを抱きしめ返していた。 「もう、ずっと僕だけのロビンだ。僕の駒鳥。もう、逃がさないから」 「わかってるよ、僕のモリー……」  かつてモリーたちが囀った秘密の園で、二人の少年たちが抱きしめ合う。  モリーとしてしか生きられない少年と、モリーになれなかった少年の物語はここにきて、終わりを告げる。

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