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アクアリウム

 例年にない猛暑のため、いろいろな遊興施設が夜間営業をしているとニュースで報じてるのを見た。遊園地や、動物園、そして水族館も。  俺は水族館が子供のころから好きだった。躍動するイルカのショー。ふわふわ泳ぐクラゲ。水中ではしなやかに泳ぎ回るペンギン。俺が連れていってもらった水族館は回遊魚が泳ぐ巨大な水槽が売りだったらしく、群れで泳ぐ様を見て綺麗だなと思った。  それで何度も連れて行ってもらって、大人になった今もふらりと一人で見に行ったりしている。少し残業になってむしゃくしゃした出来事もあって、このまま家に帰るのもつまらないなと思ってふらついていたら水族館が営業しているのに気付いた。  そういえば会社から駅を挟んで反対側のホテルの近くにあったなと、思い出した。  ここには来たことがなかったと思って、入ってみることにした。  受付の切符売りの女の子が微妙な表情をしていたが、入ってわかった。  カップルだらけだ。  そりゃあ、そうだよな。スーツ姿でいかにも会社帰りですって恰好で一人ではいるなんて、いないよなあ。  館内は幻想的なライト遣いで、ロマンティックなムードを醸し出していて、デートコースに最適になっていた。もともと都内のオフィス街の側の水族館だから、対象年齢が高いんだろうと思っていたが、やっぱり子供連れはほとんどいなかった。  それでもライトアップされた水生生物は俺を魅了した。イルカのショーはどうもタイミングが合わない時間で、諦めたが花火がどうの、プロジェクションマッピングがどうの、とはしゃいでいて綺麗らしいとカップル達の会話で聞いた。  そういえばエントランスも花火のマッピングで、ところどころ花火のマッピングがされたフロアもあった。  へえ、と演出に感心して楽しんで満足した俺は水槽のトンネルを抜けて、出口に向かおうとした時だった。ちょうどショーがやっている時で、出口に向かう人は少なく、俺以外には前方にいたカップルだけだった。  バシッと音がして、駆け去る音、頬を抑えてうずくまるカップルの片割れに、俺は固まってしまったのだった。 (やばい、修羅場見ちゃったよ。つーか、こういうところで修羅場するかね。女って怖ェ。) 「あの、大丈夫ですか?」  このまま追い越して出るわけにもいかず、声を掛けてしまった。  振りかえった男はかなりのイケメンで、俺好みだった。  頬をまだ押さえてる男はすまなそうな顔をして、何故か俺と近くのシティホテルの一室にいた。  冷たい水でしぼったタオルを当ててもらって、俺はシャワーを浴びさせてもらうことにした。まあ、あんな顔で電車は乗れないだろうと思ってのことだった。声掛けてしまって放置して帰るのもかわいそうな気もした。  それに好みだし。  俺はゲイで、最近恋人と別れた。というか今日。ラインで通知とかふざけてる。ほんとならしけこむのは恋人とで、ちゃんと用意はしてきた。まあ、俺がネコだからなんだが。  ゲイのカップルなんてこんなもんだ。毎回きちんとゴムつけてもらったから、よしとしよう。予約してたホテルのキャンセルするのももったいないからって理由もある。  まあ、いいさ。お互い振られた同士、慰め合ったっていいと思う。  向こうはノーマルだからやれるかは半々だけど。  バスローブだけはおって出てきた。下着もなにも着ていない。髪もドライヤーで乾かした。  彼の座っているベッドの隣のベッドに腰掛ける。 「まあ、深くはきかないけど。よっぽど酷いことしたの?」  とりあえず下種な男かどうか判断しようと思った。 「帰ろうか、送るよって言ったら馬鹿って言われて…」  は?金曜の夜デートのあとで?  彼はため息を吐いて、両手を膝の間で組んだ。 「いつも俺は、女の子を怒らせる。それでいつも振られる。」  俺は額に手をやった。 「ちょっと、待って。今日が何回目のデート?」  男は顔をあげて俺を見た。 「…5回かな?」 「キスとか、ホテルとかは?」 「え。そんなまだ早いんじゃないか?」 「童貞?」 「…ぐ…」  マジでか!? 「そりゃあ、振られるわ…」  どう見てもスマートなイケメンで、歳は27くらい、リードしてもらって夢の一夜を、と思ったら何もせずに返すなんて。脈がないと思われるよな。  キスくらいはするだろう。  ああ、でも。男は女に夢見るから、女の子の狡猾な面とか、意外に女の子の方がそういうことに積極的だったりするのに幻滅する奴もいて。  自分は妄想するくせに、女の子は清純だとか勘違いする奴もいる。  こいつも大和撫子、とか思ってる口かな。  俺の一言でさらに落ち込んだ男は、なんだかかわいそうで、可愛い。  うん。俺が食っていいよね。初モノ、いただいちゃっても。  生でもいいかなあ…童貞なら病気持ってないはずだし。 「まあ、とりあえずシャワー浴びてきなよ。寝ないわけにいかないだろ?もう,結構遅いし。」  男は俯いたままふらりと浴室に入っていった。  ああ、童貞ってのが相当ダメージくらってるな。  スマホを弄っていると男が出てきた。俺と同じでバスローブだけ着たようだ。 「まだ赤いね。氷で冷やす?」  視線を逸らしてむすっとした顔した男は何か言いたそうだった。 「…童貞で悪かったな…」  小さく呟いた言葉に拗らせかけてると俺は思った。  イケメンなのに。 「じゃあ、童貞でなくなればいいんじゃないか?」  俺は立ち上がって、ベッドのそばに立っている男に近づく。身長は少し俺が低いくらいだ。胸板は男の方が厚い。両手を相手の首に回して、口付けた。 (あ、硬直してる。)  もしかしてキスもしたことないのかもと、舌を忍び込ませた。呆然としている様子で深く合わせて吸い上げても硬直したままだった。  腰を押しつけたら、反応していた。  俺は脈はあると思って何度も口付けた。その内硬直が解けて舌を擦りあうディープキスになった。飲みきれなかった唾液が口の端を伝って落ちる。 「…んッ…」  腰を押しつけて少し揺さぶると、男のモノは反応して熱をますます帯びる。  男もいけそうだな。  ベッドへと押し倒した。顔を離して覗き込んだ顔は欲情していた。 「童貞もらっていいかな?」 「…は?」 「鈍いな。俺とセックスしようって言ってるんだよ。大丈夫俺、突っ込まれる方だから。任せて。俺、慣れてるから。あ、病気は持ってないよ。3か月前の検査白。3カ月エッチしてない。」  その3カ月ぶりで楽しみにしてたのに振られたよ!わかってたよ。連絡がないってことはそうだって。畜生! 「そ、その、君は…」 「うん。ゲイ。悪いね。女の子じゃなくて。あ、でも、お兄さんも、したいでしょ?だって、勃起してるもの。」  さわりと、男の雄を撫でる。びくりと男は震えた。萎えずにますます昂っている。 「え、…あ…」  男は戸惑った顔で抵抗も見せないで固まっているだけ。 「気持ちよくさせたげるよ。お兄さん…」  ちゅ、っとリップ音を立ててキスして、俺は男のバスローブをはだけて(下着は穿いてなかった)太腿に跨る。俺もバスローブを脱いで全裸だ。 「すぐ突っ込んでもらうには準備が足りてないから、まずはこれで…」 「突っ込む?え?」  目を白黒させてるのが可愛いよ。嫌なら抵抗してもいいんだよ?  彼の陰茎と自身の陰茎を裏側を合わせて二本まとめて扱く。手の動きに合わせて腰も動かした。  お互いの先端から先走りが滲みだし、幹も堅く張りつめた。粘液の擦り合う音が辺りに響く。 「…ん、…イイでしょ、お兄さん…気持ちよくない?」  興奮してきた。勃起すると男の雄はちょっと凶悪な質量を持ってる。  やばいなー歴代の恋人達のイチモツより断トツにでかいんだけど。 「…は、…」  ああ、気持ちいい顔してる。眉寄せて我慢してる顔だ。俺はぺろりと乾いた唇を舐めた。  俺を見上げた男はびくりと震えて質量を増やした。 「気持ちいいみたいだね。こんなの、したことないでしょ?男だから、男が感じるところはわかるよ?オナニーよりずっと気持ちよくしてあげる。」  扱く速度と握る強さに強弱を出してもう片手で球を揉む。意外とここも気持ちいい。フェラもいいけど、口に収まらないよなーこれ。処女に突っ込んじゃいけないレベル。男は身体も鍛えてあって腹筋も胸もしなやかな筋肉がしっかりと存在していた。  俺?俺は細いけど、あんまり鍛えてはいないな。 「…うぁ…」  男がびくりと震えた。うん。俺もそろそろイきそうだ。 「…あん…あっ…あっ…」  俺の口から上擦った嬌声が漏れる。二つの先端から勢いよく精液が吐き出された。 「…はあ…じゃあ、次は本番、かな?」  俺はにんまりと笑って賢者タイムだろう男を見た。  俺は用意してあったローションを取り出して、後孔に突っ込んだ。冷たいそれはすぐに体液に馴染んで蕩けた。男の手を取って指を中につっこむ。 「え!?」 「中、解してよ。あんたの、おっきいからこのままじゃ、入らないんだよ。流血したくないし。」  男の人差し指を咥えて腰を上下に揺する。ぐるりと腰を回して、内壁の内部をその指で擦った。  ああ、久しぶりの、自分の手以外の指。俺の内部が歓喜に震えて食い締める。 「お、おい…ほ、本気なのか?」  男が今さら聞いてくる。まあ、ノンケの童貞が男の尻の穴に指なんて、嫌かもしれないけど、何故か、相手のモノは、また元気を取り戻し始めてるんだよな。逃げるそぶりもないし。ただびっくりして思考が追いつかないとか?もしくは…。  素質あるんじゃないか? 「ね、指で、中柔らかくして広げてよ。お願い…」  身体を倒して、男の唇に触れたまま囁いた。そのまま、吸い上げる。俺のもので相手のモノを擦って刺激した。腰をゆっくり前後に動かしながらディープキスをする。されるがままの男は次第にキスに慣れたのか、自分から貪り始めた。  俺の中に入れた指も、抜き差しして自分から二本に増やしてくれた。  うん。やれそう。  お互いの乱れた息使いと、くちゅくちゅという水音が室内に響く。興奮して体温が上がって、触れる体は熱い。  俺の身体の下で、男のモノは張りつめてる。俺の尻の穴も、そこそこ準備できた。 「…ん、入れるよ?あんたのちょうだい。」  男の指を後孔から抜いて起きがった。男の視線が俺を追いかける。男の雄がまた硬度を増す。俺はにんまりと笑った。男も入れたいと思っている、と。 「…あ、…本当にする、のか?」  掠れた声で、最後の悪あがきを男がしている、と思った。 「…する。お兄さんも、その気で俺の後ろ、弄ったんだよね?」  男の顔に朱が散った。うん。いける。  俺は、男の雄を手で支えながら、腰をその上に落としていった。 「ん…ほんとに、でかいね、お兄さんの…」  圧迫感に目の前で星が散る。きつい。3か月ぶりだし、昨日慣らした程度じゃ、無理だったなあ。元恋人のなら、すんなり入ったと思うけど。  ゆっくりと飲み込んでいく。男の視線が強いモノになる。ああ、欲情に塗れた目。  興奮する。 「…あ…はっ…」  なんとか飲み込んで、そのまま慣れるまで待つ。俺の中が、収縮して、男のモノを締め付ける。 「ほんと、きつい…」  それでも、腰を上下にゆっくりと持ち上げて落とす。  でかいそれの、雁の部分が俺のイイトコロに当たって、びくりと身体が震えた。俺の雄が天を向いて涎を垂らす。 「…あん…気持ち、イイ…」  多分俺は蕩けた顔で、男を見ている。モノ欲しそうな顔で。  俺の手が胸の突起を弄る。そこは、弄られて開発されてて、ぷくりといつも腫れてるように見える。自分で弄っても気持ちいい。  もう片手を自分の雄に伸ばして、扱き始める。ああ、気持ちいい。腰を落として座り込むと、奥まで男の昂りが届いて、脳天に快感が走る。  やばい、気持ちいい…。 「…あっ…あ…」  しばらく夢中になって腰を揺らしてたら、いきなり突き上げられた。  え?  手が伸びてきて、口付けられる。 「…ん?…んッ…」  乱暴な、慣れてない、貪るようなキス。でも、俺は気持ちよくなって胸と股間を弄っていた手を止めて、男の背に回して口付けを楽しんだ。  ああ、気持ちいい。  そうしたらいつの間にか、ひっくり返されてて、男に突き上げられていた。腰が浮いてる。男の肩に手を置いて揺さぶられる快感に喘ぐ。 「イイ…あん…あっ…奥、来る…あっ…イっちゃ、う…あっ…」  腰骨が打ちつけられる音と、接合部からの水音が室内に響く。中が擦られる度に、意識が白くなっていく。勢い良く突き上げられて、俺は達した。 「…あっ…あああっ…あああぁーーっ…」  吐き出しても、男は達しないで、腰を揺らした。また、前立腺を擦られて、快感が戻る。  やばい、空イキするかも。 「…あ、凄い…また、…イく…あっ…」  それから俺は何度も達して、出なくなって。男は抜かないまま、2度は出したと思う。空イキで、何度も達して、意識が飛んで、快感に浮かされて何が何だか、わからなくなった。  すっごい、気持ちよかった。そして俺は気絶したらしい。  おきたら、10時回っていた。  誰もいなかった。 「あーあ。すっげ、キスマークだらけ、乳首なんか噛み痕ついてんの…童貞の暴走って怖いわ―。」  まあ、仕方ない。シャワーを浴びて後始末をして部屋を出た。書置きもなにもなかったが支払いだけはしてあった。そういえばドアノブに起こすなって札かかってたな。  結局、名前もなにもわからなかった。  ちゃんと話して、連絡先くらい教えてもらえばよかったな。  童貞にあんなに乱されるなんて、思わなかったな。  しばらく恋人探しはできないなあ。ため息をついて、欲望を優先した自分に後悔した。  それが8月下旬の出来事。今は9月。あれから元恋人がよりを戻すだの言ってきたのでIDを抹消した。ふざけんな。むしゃくしゃして、仕事帰りにどこかに飲みに入ろうかと、寄り道することにした。  街はまだ暑いけれど、飾り付けはもう秋だ。考え事して歩いていたらうっかり、水族館まで来てしまった。夜間営業ももう終わりなのかと、イベントの看板を見て思う。 「おい。」  どうしよう、入ろうかな。 「おい、そこの…あー…。」  なんだ?俺に呼び掛けてるのか?  不審そうに後ろを向くと、あの男が立っていた。  あれ? 「ちょっと付き合え。」  なんか、怒ってるみたいなんだけど。  腕を掴まれて引っ張られて、一緒に水族館に入った。  なんだか、恋人繋ぎのまま、館内をめぐる。なんだこれ?どういう状況?手の熱が気になって、クラゲを見るどころじゃない。  イルカのショーに連れてかれて、男女のアベックばかりの中、後ろの方の席に座る。  ライトアップされて、プロジェクションマッピングを使ったショーは幻想的で綺麗だった。 「逃げて悪かった。パニックを起こしていたんだ。そこは謝る。」  男が小声で話し出した。いや、ノンケが男とやっちゃったらパニくりますよね。わかります。別に気にしてないんだけどな。 「俺の名前は武田大知(タケダダイチ)。名前を教えてくれないか?」 「え。俺の名前?…小林諒(コバヤシリョウ)だけど…」  今さら名前教え合うって。なんか恥ずかしいな。頬が火照る。  ざばっと音がしてイルカが一斉に跳ねた。うわ、すごい。 「水族館、好きなのか?」  思わずイルカショーに気を取られていたら、聞かれた。 「うん。クラゲとかふよふよしてるの見てると癒される。」 「そうか。それで一人で、見に来てたんだな。1人でホテル出てきて、冷静になって戻ったら、もうチェックアウトした後で。名前も知らないし、どうしたらもう一度会えるだろうかって思った。そういえばこの水族館で会ったなと思いだして、時間がある時、ここに来ていた。今日会えてよかったよ。」  あ、待ち伏せされてたんだ。 「あの、俺別に置いてかれたこと気にしてませんよ。あの時はどっちかっていうと俺は失礼なことしたような?」  失礼なこと、と言ったら睨まれた。 「それは全然失礼じゃなかった。どちらかというと俺がいい思いをした。」  へ?男が男に襲われたんだぞ?大丈夫なのか?  俺が呆けた顔をしてる間にショーは終わって、みんなぞろぞろ出ていった。俺達は一番最後に出て、また恋人繋ぎをされて出口まで歩くことになった。  いや、いい歳したサラリーマンが男同士で恋人繋ぎって…いいのか?  というか、武田の俺を探していたっていうのは、どういうことなんだ?謝れって感じじゃないし。  そうぐるぐる考えてると、武田がスマホを弄ってた。  いつの間にか外に出ていた。 「食事はしたのか?」 「いや、しようかなって探してて通りかかったんだけど。」 「じゃあ、ホテル予約したからそのホテルのレストランで食事したら、今日は一緒に泊まろう。」 「はあ??」  それで今スマホ弄ってたのか?ってか、俺とホテル? 「諒が、デートのあとはホテルに誘えって言っただろう?だから誘っている。」  …って名前呼びかよ。今のデートだったのか? 「な、何言って…」  武田がすっと俺に近づいて、耳元に口を寄せた。 「あれから、諒のことが忘れられなかった。俺と、付き合って欲しい。」  そのまま軽くキスされた。俺は真っ赤になったと思う。  俺はそのまま固まってたら、ホテルまで連行されて、結局付き合うことになった。  信じられない。 「あ…大知…ん、もう、ダメ…」 「諒の中はいつもきつくてすごいな。気持ちがよすぎる。」 「ば、ばか、言うな、恥ずかしい。」 「あんなに積極的だったくせに。恥ずかしがるなよ。」  付き合うようになってから、俺はあの夜のことをいつも持ち出されてからかわれる。あの時は俺はかなりたまってたからなのと、二度と会うことないだろうって思ってたからだし。  大知が積極的だと、その、迫るっていうのも、恥ずかしい。 「意地悪。もう、やだあ…」  それで俺は啼かされる。主導権なんか、握れなかった。まあ、別に握らなくてもいいんだけど。  大知は俺とやってから、女がダメになったそうだ。夜のおかずは俺になって、これはだめだと俺を探したらしい。  まあ、俺も、おかずは大知になってたけど。 「諒、愛してる。」  びくりと俺は震えて達してしまった。 「反則…俺も愛してる。大知…」  甘い口付けが降ってくる。  もう季節は巡って、また夏が来る。またあの水族館に二人で行きたい。そう言ったら。 「付き合って一周年記念デートだな。」  と嬉しそうに言われた。今俺は大知の部屋に通い詰めている。割といいとこのお坊ちゃんで大企業勤めだった。俺もそこそこの有名企業だけど、規模が違うんだよな。それに俺の方が二個年上だった。  昔、ゲイの友人にお前は回遊魚みたいだな、と言われたが(恋人と長続きしないから)俺はクマノミになろうと思う。イソギンチャクはもちろん大知だ。

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