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57♡⑨※
すぐには思い付かない事を、俺が一番弱いところをいじくられながら考えるなんてムリだ。
聖南の指、一本しか入ってないんだよ。それも俺を傷付けないように、優しく優しく挿れたり抜いたりしてる。
イイところをぐりぐり攻められてるわけでもない。
それなのになんでこんなに気持ちいいの……。
俺が一人で慣らしてる時は、ただの寂しい行為だったのに……。
「あ、あの……っ、聖南さん! もう指、やめ……っ」
「まだ終わってねぇんだな、これが」
「えっ? ふぁっ……!」
やらしくない指使いにうっとりしかけた俺は、ハッと我に返って抗議したのに聞き入れられなかった。
これ以上はほんとにダメだと腰を引いてみても、ぬるついた手のひらが俺のお尻を掴んで離さない。
うぅ……やめてくれないと本気でその気になっちゃうじゃん……っ。
聖南の指使い、中が大丈夫かどうかを確認してるだけなんだよね……?
ローションのやらしい音は控えめなのに、ただ少しかき回されただけでこんなに気持ちいいなんて……。
根元まで入ってイジイジしてるのはどの指なんだろ……聖南は最初中指を使いがちだから中指かな……って、今はそんなことどうでもいいんだってば……!
「異常が無いかの確認中なんでおとなしくしてもらって」
「なっ……!? いっ、ヤダ……っ、聖南さん、ヤだ……っ」
「なんでヤなの。気持ちよくなってるくせにー」
「だから……っ、だからヤダって言っ……」
「そんなにイヤならやめるか」
「えっ、あ……っ、ンっ……!」
言うなりすぐにぬるっと引き抜いた聖南は、滑った指をジッと見て、唖然と振り返った俺に意味深な視線を寄越した。
前が思いっきり反応してること、気付かれてたんだ……。恥ずかしい……。
一人で盛り上がってるような気にもなって、ほんの少しむなしい気持ちにもなる。
「葉璃、思ってることは全部吐き出せって言ったよな? 俺は葉璃の考えてる事、思ってる事をすべて分かってやれるわけじゃない。さっきのだって……俺は葉璃の事を分かった気でいたから、あんな軽率なことが言えたんだ」
「あ、いや……それは……っ」
「医者の真似事すんのも限界があるよな」
「…………っ」
聖南、やっぱり今日はする気がないのかな。
濡れた指をティッシュで拭った聖南が、申し訳無さ全開の後悔を口にする。
俺は、聖南が軽率なことを言っただなんて微塵も思ってない。むしろ俺を肯定してくれていて、大きな期待までかけてくれてるじゃん。
思い詰めたように、俯かないでほしい。
そんなの聖南らしくないよ。
無性に聖南の頭を撫でたい衝動に駆られた俺は、俯き加減で下唇を噛む、らしくない姿を前にどうしたらいいか分からなくなった。
いじくられた穴がウズウズしてて、おまけにそこはローションでぬるぬるに濡れちゃってるからぺたんと座るわけにはいかない。
かと言ってこんな状態の聖南を前に横になるなんて失礼だ。
ど、どうしよう……ジッとしてるのはツラいものがあるんだけど……。
「俺は、やる事はやるって言ったけど、状況が変わったからしない、とも言った。葉璃のことが心配だからだ」
「……っ、はい、……」
「なぁ葉璃。俺は優柔不断な男なんだよ」
「そんなこと……っ」
「他の事は絶対ブレない自信あんのに。……なんでだろうな。葉璃に関してだけは〝絶対〟が揺れるんだよ。俺は葉璃にとって最良の選択をしたいんだ、常に」
「…………」
四つん這いの恥ずかしい態勢のまま、振り返る格好で俺は聖南の暗い表情に釘付けだった。
「あの、……それってヒナタのこと言ってます? それとも……」
「どっちもだよ。当たり前だろ」
「うっ……」
脳内がやらしい事で埋め尽くされそうになってた自分がイヤになる。
俺に酷なことを言ったと嘆く聖南は、こんなにも思い詰めちゃってるのに……。
せっかくの密会がお尻ムズムズ事件で台無しになるなんて、そんなのダメだ。
ヒナタのことも、今夜のことも、今ちゃんと話さなきゃ二人ともスッキリしない。
そもそも、直接こうして二人きりで会える機会は、聖南が時間を作ってくれなきゃ成り立たないんだ。
忙しい聖南の時間を無駄にしたらダメ。
聖南をその気にさせなきゃ、じゃないよ。
俺ってば何を考えてたんだ……っ。
「お、俺、聖南さんに話したいことあるんです。さっき一人で考えてたことぜんぶ、聖南さんに聞いてもらいたい。で、でも……っ」
「うん?」
「俺は今、ちょっと困ってます。聖南さんにどう言えばいいのかなって……」
「うん。そのまんま言えばいいんじゃねぇの」
「…………」
ヒナタのこと。
今夜のエッチのこと。
聖南の〝どっちも〟って、この二つだよね。
でも俺は全裸で四つん這い中で、真面目な話をするには滑稽過ぎる。
そのまんま言えばいいって諭してくれる聖南は優しいんだけど、状況的にどっちを優先したらいいんだろ……?
「あの、……あの、……俺、俺は……もうムズムズしてなくて、聖南さんが確認して大丈夫だって言うなら、その……」
「さっき聞いたよ、それ」
「うぅ……っ! 聖南さん、俺が何を言いたいか気付いてますよねっ?」
「気付いてるけど葉璃の口から聞きたい。無理強いはしたくねぇって言ったじゃん」
「うー! なんかこないだから聖南さん意地悪になってませんっ?」
「なってねぇよ」
「うー! うー! うー!」
「サイレン鳴らさなくていいから。ほら、早く早く」
「…………っ」
そ、そんな……っ! 急かされても困るよ……!
っていうか聖南は、俺が困ってることに気付いててあえてまた難題を課してるんだ。
ちゃんと本心を言えって。
思ってること、ぜんぶ言えって。
「……聖南さんの意地悪」
「違うな。葉璃が言いたいのはそれじゃねぇ」
「〜〜っ、し、したいんです! ヒナタのことちゃんと話したいのは山々なんですけど、お尻丸出しでこんな格好してて、落ち着かないんです! 聖南さんにその気が無くても、俺はしたいったらしたいんです! それからたくさんお話してくれたら嬉しいです!」
「…………っ、プッ……!」
「なっ、なんで笑うんですか! 思ってること言えって言ったのは聖南さんなのに……っ! もう知らない! もうっ、もうっ、好きにしてください!」
「それだ! それそれ! やっと言ったな!」
「えっ!? うわわわ……っ!」
本音をさらけ出した直後に笑われて、ピキッときちゃった俺は何が起こったのか分からなかった。
聖南が迫ってきた次の瞬間には押し倒されていて、視界がくるっと回った。
見上げると、俺に覆い被さった聖南がニヤッと笑う。
「……ったく、遅えよ」
「あぅっ、うっ?」
「意味は違ってそうだけど、俺はそれが聞きたかった♡ さっきその一言で悶えそうになったからな」
「え、えぇ……っ? あっ、ちょっと待っ、聖南さん何を……っ」
「好きにしていいんだろ?」
聞きたかったって……聞きたかったって、それ!?
あんなに深刻そうな顔して、俺が本心をぶっちゃけても「ヒナタの件が先だろ」と叱り口調で言いそうな雰囲気だったじゃん……!
「いやいやいやいや……っ! ちょっ、そこはダメです! そこは好きにしたらダメ!」
「なんで」
俺が呆気に取られる間もなく、聖南がずりずりと下に移動した。
何する気!? と白々しくウブぶれないのが悲しい。
目的の場所で止まった聖南の瞳が、やめてと困惑する俺にはやっと、やっと、その気になってるように見えた。
だけど喜べないよ。
聖南が苦手だと言うそれは、俺も苦手なんだってば……!
「うまそうに勃ってたら食い付きたくもなるだろ。我慢すんの大変だったんだからな」
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