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夜彦
周りを目だけで見渡すと、壁は白と青のストライプでドアは白一色の長方形。
窓を見ると、藍色に染まっていたからたぶん夜。
家具は僕が寝ているベッドだけ。
あとはチュッチュッと音が変わりながらも血を吸い続ける真昼。
上半身だけ脱いでいる黄緑のつなぎが蛍光灯に負けじと明るく見えて、目がチカチカする。
「わたくしのこと、お忘れでごさいませんか?」
そう言われた後、首を強く噛まれてジュッと吸われた。
「アッ、アハッ……ァ」
首が絞められた苦しさといきなり感じる快楽にまたクラクラし始める。
「穏やかなわたくしでも怒ると怖いのでございます」
荒くなった息を整えようと、あごを上げてゆっくり呼吸をする僕はごめんなさいと言う。
「気にしてはおりませんよ。さて、かわいいお顔を見せてくださいませ」
両手を頬へ添えられて、右へと引っ張られる。
そこにはオレンジ色でおでこの上にちょんまげで結わえられている髪型で目元と口元が三日月状になっている顔があった。
なにより印象的だったのは口元の左側にある今にも取れそうなほどの大きいほくろ。
そういえば、真昼にもあごの右側にあったと思い出す。
「わたくし、朝日夜彦 と申します……以後、お見知り置きを」
礼儀正しく頭を下げられたから、僕も思わず頭だけでお辞儀をする。
昼、夕、夜……あとは朝。
「もしかして、兄弟ってこと?」
恐る恐る年上の男性……夜彦に尋ねると、賢いですねとまた微笑みかけてきた。
「わたくしが長男、ひるが次男でございます。三男はあなたを助けたようちゃんでございますよ」
ようちゃん……彼が三男か。
結構大人に見えたんだけど、この2人より若いんだ。
「目の前のチビちゃんより、ようちゃんは若いのでございますよ」
少しハスキーな声で毒づいた夜彦はおほほと口元を押さえて笑う。
「だまれ、ございます野郎!」
ドスの効いた声の先を見ると、歯を強く噛み締めてガルルと唸る真昼。
お願いだから、僕を挟んでケンカしないで。
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