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第14話 けどそこにいたのは…

「……」 「……」  そこにいたのは高橋先輩ではなく、聖先輩だった。  聖先輩は口元に手の甲を当てながら少し視線をずらしている。瞬きを多くして、顔から耳にかけて真っ赤に染めていた。  えぇ、照れてる! 可愛い、そんな顔もするんだね!  ――じゃないよ! 違うじゃん! 高橋先輩じゃないじゃん!  ぼくはこの恥ずかしい状況をどうにかしたくて、あえて顔には出さないようにしてクールに振る舞った。 「あ、先輩。今の聞いてました?」 「……いいよ」 「ん、何がいいんでしょう」 「だから……分かるだろ」  状況が飲み込めないうちに、先輩はけほんと咳払いをしてベッドに腰掛け直した。 「お前の気持ち、受け止めてやるってことだよ」 「なっ、なっ……なっ」 「いいよ。付き合っても」 「はいっ?!」  これは一体どういう状況だろうか。  状況を見る限り、どうやらこの人はここで昼寝をしていたみたいだが。  いや、その前にこの人は高橋先輩じゃなくて、聖先輩だ。さっきぼくは確かに高橋先輩、と言った気がするのに。 「あの、ぼく、高橋先輩って言いましたよね……?」 「あぁ、言ったな。苗字じゃなくて名前で呼んでくれていいよ」 「な、名前?」 「だから、高橋 聖。俺の名前」  床に転がっていた上履きを持ち、カッと目を見開く。  そこには確かに『高橋 聖』の文字が。  ……聖先輩も、なんと偶然にも高橋だったのかぁ。 【高橋氏……日本において、佐藤、鈴木に次いで多い姓。東北地方に特に多い苗字の一つ。~ウィキ〇ディアより~】  ぼくは上履きを遠くへ投げ捨てる。  一刻も早く誤解を解かねばと必死だった。 「あのっ、ところでこのベッドにいた高橋……歩太先輩は?」 「お昼前にとっくに帰ってった。それに、歩太がいたのはそっちのベッド」  反射的に後ろを振り向く。  そうだ。確かに言われてみれば歩太先輩が寝ていたのは奥側のベッド。告白することに夢中で考えもしなかった。  だって普通思うでしょう! 一つだけカーテンが閉まっていたら、そこに歩太先輩が寝ているって!  聖先輩は立ち上がって、ぼくがさっき投げ捨てた上履きを拾いにいった。

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