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第49話 姉ちゃんとぼく3
歩太先輩と付き合えるかどうかは分からない。
しかし受け入れて貰える可能性の方が高いだろう。なんてったって歩太先輩のお気に入りだから。
「たぶん、大丈夫だと思う。歩太先輩にとってぼくは特別なんだなって思える発言もされたし」
「違う違う。そういう事じゃないわよ。ほんと何も分かってないわね」
姉ちゃんはあいたた、と頭を抱えるのでムッとする。
「なに? どういう事なの?」
「逆を考えてごらんなさい。雫が歩太くんに告白されてお付き合いを始めた。けど歩太くんは他に好きな人が出来たとか何とか言って、急に雫を振る。もちろん雫は大ショック。そして気付けば、歩太くんに新しい恋人が出来ていた。その相手は自分の大親友の聖くん。どうこれ? こんなの納得できる?」
「全然出来ませんっ……!!」
ぼくは頭を抱えながら床にうずくまる。
そんなの、ショック過ぎて学校通ってる場合じゃなくなる。
そんな事になったらもう聖くんとは親友やめようかとも思ってしまうだろう。そして、しれっと親友と付き合いだした歩太くんの事も大嫌いになるはずだ。
「聖先輩と歩太先輩の仲を壊すつもり?」
「やだっ! それは絶対に嫌です!」
「けどあんた、まさにそうしようとしてるじゃん」
「ううう……」
姉ちゃんの言葉が重石のように背中にのしかかる。
「じゃあ一体、どうしたらいいんだ……」
「もし聖先輩が好きじゃないんだったら速攻別れる事。で、歩太先輩には……そうねぇ、まぁ一年くらいはあかせて、改めて告白してみたらいいんじゃない?」
「い、一年も?! その間に歩太先輩が誰かに取られちゃうかもしれないじゃん!」
「そうなったら縁が無かったってことで、諦めなさい。ていうかその前に、本当に歩太先輩と付き合える可能性はあるの?」
「あるある! 勘だけど、なんとなくいける気がするんだ」
「ふぅん?」
姉ちゃんはあんまり信じていないようだ。
そしてなぜか徐に、飾り棚の中から手乗りサイズのうさぎとクマのぬいぐるみを持ってきて、それぞれを手に持って左右に振った。
「ここに、川で溺れている私と歩太先輩がいます。どちらを先に助けますか」
「歩太先輩」
即答すると、姉ちゃんは舌打ちをして、うさぎのぬいぐるみをポイと放り投げた。そして今度はパンダのぬいぐるみを手に取り、僕の顔の前で左右に振る。
「じゃあ、歩太先輩と聖先輩が同時に川で溺れています。どちらを先に助けますか」
これは即答出来なかった。
だってどちらも大切だ。どちらを先にだなんて、そんなの選べない。
答えられずにいたら、姉ちゃんはぬいぐるみを床に置いて言った。
「雫、まんざらでも無いんじゃないの?」
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