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第53話 聖先輩は不機嫌です。
「は?」
次の日の登校時、挨拶もそこそこに聖先輩に事情を話すと、案の定眉をしかめられた。
朝ということもあり、ますます機嫌が悪くなったようだ。
「ほんとすいません! ぼく、すっかり忘れていて」
「お前が今日練習出来るっていうから昨日福田たちに練習教えたんだよ。こっちは予定組んでんだから」
「わーすいません! ほんとすいません!」
ジリジリとおでこを付けながら睨まれると、涙目で必死に謝るしか方法はない。
先輩は許してくれたのか、呆れたため息を吐いて前を向いた。
「その図書委員の仕事って、どこでやるの」
「あ、図書室です。仕事の引き継ぎが終わったら書庫室の整理もしなくちゃいけなくて時間かかりそうなので、先輩、先に帰って大丈夫ですよ」
「言われなくてもそうするけど」
冷たくそう言われてしまい、ムッとする。
実は究極の照れ屋さんなんだって事をここで周りの生徒に大声でバラしてやってもいいんだぜーー!
そんな事を考えながら正門にいくと、歩太先輩が声を掛けてくれた。
「小峰、聖、おはよう」
「あ、高橋先輩、おはようございまーす!」
「バスケの調子はどう? 腕、痛くなってない?」
「大丈夫です! ぼく、頑張りますね!」
ぼくは歩太先輩に元気よく挨拶をし、ブンブンと手を振る。
歩太先輩はいつでも優しいよなぁ。隣の無愛想ツンデレ男とは大違いだ。
やっぱりぼく、歩太先輩の事……
「お前さ」
ルンルンとスキップしちゃうくらいの勢いの気持ちでいたら、聖先輩は低い声を発する。
ハッと気付けば、より一層冷たい瞳で見つめられていた。
この浮き足立った気持ちがバレないように、目を潤ませてわざと小首を傾げてみせた。
「なんでしょう?」
「……いや」
先輩は何か言いたげな視線をぼくに向けつつも、先に校舎に入っていった。
流石にぼくも、悪いことしてしまったと反省する。ぼくは今、聖先輩とお付き合いしているのに、歩太先輩に明らかに好き好きオーラ全開で話し掛けてしまった。
聖先輩はたぶん、歩太先輩と自分との対応の違いが気になったのだろう。
なるべく平等に、はしゃぎ過ぎないようにと自戒してローファーを脱いだ。
ぼくの一連の行動は監視されているのだと気付くのは、まだまだ先である……。
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