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第4話

(おさ)に呼ばれてる。帰りは朝だ」  這わされ、いきり立ったものをねじ込まれて、夜通し玩弄される。見返りはドングリの実が百個。  の腹の足しになるものを得ると割り切ってしまえば、辱めを受けるくらいへっちゃらだ。  ところが戸口に先回りされた。 「行くな。言いなりになるのは、やめろ」 「長に逆らえばムラから追放される」  いちばん近い隣のムラは、オオサカにあると風の噂に聞いた。道のりは険しく、たどり着けるか否かは運任せ。  第一、よそ者は袋叩きに遭いかねない。共同体からはじき出されたが最後、野垂れ死にするのがオチだ。  遠吠えが夜のしじまを切り裂いた。  アモウはだらりと腕を下げ、それもつかのま再び通せん坊をしたかと思えば、口を真一文字に結んで横にずれる。そして、くるりと背中を向けた。  サギリは、殊更大股で広場を突っ切った。髪をかきあげると、そこにくちづけられた感触が鮮やかに甦って、息苦しさに苛まれる。  アモウ……呟く声は甘やかさと切なさをない交ぜに、闇に溶け入る。おれも、おまえと今いちど巡り会うために生まれ変わってみせる、と言えばよかった。  長の寝床で嬲り放題に嬲られている間中、くやしげにゆがんだ顔が絶えず目の前にちらついた。アモウを裏切っている、という罪悪感に心が軋めいた。    その翌日、ふたりはつれだって猟に出かけた。去年とおととしの秋は、瓦礫を突き破って芋がたわわに実ったものだが、今年はツキに見放されている。ドングリにしても、いつもの年の半分も生らないうえに虫に食われているものが多い。  貯蔵庫がスカスカでは冬を越せない。野犬狩りに精を出して、干し肉をどっさりこしらえておく必要があった。  サギリの武器は弓矢で、アモウの武器は鉄パイプを改良した槍だ。慰み者にされた翌日は常にそうだが、今日もふたりの間には重苦しい沈黙が垂れ込めていた。  鉄骨のジャングルに差しかかったときだ。皮膚が粟立ち、アモウは咄嗟にサギリを背中にかばった。  すばやく槍をかまえる。サギリも矢を摑み取った。

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