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第13話

■  ……きょうだいがいるかどうか? さあ、当ててみろよ。  えっ、お兄ちゃんがいるでしょ、って……ああ、うん、そう。やっぱりそう思った、って……何でかなあ、俺、こういうのすぐ当てられちゃうんだよな、昔から。てか、お兄ちゃんがいそうな性格って何?  まあいいけど。  兄貴は俺とは全然違うよ。勉強も運動もたいてい俺よりできるし。目の上のたんこぶ、って感じ。上があんまりできられるとさあ、やる気なくさない? ちょっとは手ぇ抜いてくれりゃいいのに、どこまでも俺をこてんぱんにしないと気が済まないみたいでさ。ああもう分かってるっつーの、兄貴が素晴らしいことは十二分に分かってますから、って。まあ逆に親からのプレッシャーは全然感じないから楽かもな。ちょっと成績よかったりすると、めちゃ褒めてもらえるし。兄貴見てると、何を好き好んで自分から重い荷物背負いに行ってんのか、って思うときがあるね。馬鹿じゃねえの。賢いんだけど、馬鹿なんだよ。それとも苦しいのが好きなのかもしれない。マゾか。  いや、でも性癖はSだからな。思いやってるように見えて、ネチネチ婉曲的に責めてくんの。何で知ってる、って……知ってるわけないだろ、想像だよ、想像。いや普段はこんな想像しねーから。したらおかしいだろ。お前が変な話振ってくるせいじゃねーか。  でも完璧な兄貴なんだけどさ、ひとつだけ欠点、知ってんだよ。  兄貴はたぶん、ひとを好きになったことがない。  好きになったことないのにやることはやってんのか、って……。まあ、兄貴に言い寄ってくる奴はいっぱいいるからな。顔はいいし。でも自分から誰かを好きになった、ってことはたぶん、なくて。……あー、それはそれで何か腹立つんだけど。  でも、だから、相手に自分の思いを伝えるってのが、めちゃめちゃ下手くそなの。だからいざ好きな相手ができたときに、絶対、失敗すると思う。そのときのことを考えるとちょっと愉快になれるんだな。努力すれば何でも手に入れられると思っている節のある兄貴だけどさ、そうもいかないものがあるんだって、思い知ればいい。それで老後ひとり寂しくなってるところでさあ、救いの手を差し伸べてやんの。……歪んでる? そんなまどろっこしいことしないで、勉強とか運動とかで負かしてやればいい?  それができないから、言ってんじゃん。  ……何だかんだ、兄貴のことを分かってんのは俺しかいねえんだよ。  俺しか……  仲、いいんだね……って、気持ち悪いこと言うなよ。そんなんじゃねーし。つか、何でこんな話になったんだっけ。やめやめ……あー、どうしようかな、お前さあ……いや、何でもない。  え? 気になる? いや、言おうかどうしようか迷ってたんだけどさあ、お前ちょっと顔がさ、兄貴に似てんだよ。怒んなって。聞きたいって言ったのお前じゃん。顔だけ。顔だけだから。だからやめよ、変な気分になる。近親相姦ごっこ? 馬鹿言うなよ。そんなんお前だって……つーか、お前の方が嫌だろ。あーはいはい、分かってる、好きだよ。お前のそういうとこ。どういうとこ、って……いいじゃん、もう。早くやろうぜ。こんな話するために会いたかったわけじゃないんだしさあ……

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