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[序幕]誕生秘話

 15歳の誕生日に俺は死んだ。  思えば短い人生だったなあ。物心ついた時には覚悟してたけど。俺は生まれた時から心臓に疾患があり、医者から二十歳までは生きられないだろうと宣告されていた。  その命の期限まではまだ5年もあったのに、俺のポンコツな心臓はその命の期限、5年も待ってはくれなかった。  死んだ俺はどうなったのかと言うと、どうやらこれから生まれ変わるらしい。死んでしばらくは天に召されて幸せに暮らすのかと思いきや、何故だか天からの迎えは来なかった。三途の川を渡ることもなく、気づけばここでぷかぷか浮いている。  まだ目は見えないようで、周りは真っ暗で、ただ生温い水らしきものが体に纏わり付く感覚がする。重力も全く感じられないところを見ると、恐らくは羊水の中をぷかぷか浮いているんだと予想できたのだ。  どうやら耳は聞こえているらしく、ぽちゃぽちゃと水が揺れる音がする。臭覚も既にあるようで、鼻の中に入り込んでいるらしい羊水はほんのり甘い香りがした。  水の中でも息ができているらしく、口を開けてみるとドッと水が口の中に流れ込んで来る。別に苦しくはないが驚いて、俺は口の中の水を吐き出した。  ……それにしても気持ちがいいな。母さんのお腹の中、か。  生温い羊水は体温と同じくらいで、(まと)わり付いて来るその感覚がまた気持ちいい。手足をぐんと伸ばしてみれば、柔らかな壁にぶつかった。  どうやら俺がいるスペースにはかなりの余裕があるようで、両手足を伸ばしてみるも端と端に届く気配はまるでない。  よくわからないけれど、俺の成長に合わせてスペースが広がる仕様ではなさそうだ。その証拠に、何日かすると端と端に手足が届くようになって来た。  俺の記憶だと胎児の成長に合わせて母さんのお腹が大きくなって行くはずなのに、何故だか日に日に俺がいるスペースが狭くなって来る。目が見えるようになると、ほんのり漂って来るにおいもきつくなって来た。  なんだっけ。この甘ったるいにおい。何度も嗅いだ気がするんだけど。  つか、俺、前世の記憶、ばりばりに残ってんじゃん。もしかして、産まれ出た瞬間に消えたりするのかな。  そういや3歳児に生まれる前のことを覚えているかと聞いたら、はっきりとじゃないけどお腹の中でのことを覚えてたりするんだっけ。  と言うことは、だんだん忘れて来るってことか。恐らくは赤ん坊が記憶するスペースは狭いから、新しく覚えた端から忘れてしまうのかも知れない。  そんなことを考えていると、初めて俺がいる場所ががたんと大きく揺れた。スペースはだいぶ狭くなっていて、揺れた衝撃で底に背中を着く。 『…………』  その時、初めて誰かひとの声がした。もしかして、とうとう産まれる瞬間が来たのかも知れない。  思えばあっという間だったな。というか、死んですぐに生まれ変わるのか。  今度は健康な体がいいなあとかなんとか暢気(のんき)に思っていた俺が、周りの水が全てなくなった後に最初に見たものは、 「!!」  優しい母さんの顔ではなく、何故だか目の前に迫った包丁らしき刃物の鋭い刃先だった。 「うぎゃー!!」  あまりの驚きと恐怖に、思い切り泣きわめいてしまったのは言うまでもない。 ◇ ◇ ◇ ※注釈 生まれて直ぐに目が見えているなんてことはないと思いますが、生まれた状況把握のために目が見えている設定になっています。以降もいろいろとツッコミどころ満載になると予想されますが、フィクションでファンタジーなお話なので気にせず読み流してくださいね。

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