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ハッピーハロウィン戦争
おばけの形のクッキーには穴を開けて、飴細工を入れてまた焼くと、溶けて固まって、ステンドグラスのようにキラキラ輝く。
カボチャのケーキには包帯みたいに生クリームを纏わせて、飾り付けたら、ミイラみたい。
真っ白なムースに、とろとろと真っ赤なイチゴジャムをぽたぽた垂らして、チョコの蝙蝠をちょこんと乗せるのだ。
ハッピーハッピーハロウィン。
お菓子さえあれば、モンスターだって悪さはできない。
「ハロウィンはね、モンスターが出歩いてるから仮装して人間だと気づかれないようにしていたずらされないようにするんだよー」
「へえ」
ライは甘ったるい匂いに眉を寄せるが、希望 はくるくると回って躍りながら、歌でも歌うように軽やかに喋り続ける。
今日は朝から口を利かなかったのに、ケーキやらクッキーやらを作り出したら急によく喋るようになった。
希望の無言の抗議の原因はわかっていた。
昨晩、希望が妙に挑発的な格好をして
『見て見て! 尻尾と羽根が動くんだよ! ほら!』
と、コスチュームの尻尾と羽を挑発的に揺らしたので、問答無用で組み敷いたことが原因だろう。
何故それで希望がへそを曲げてしまったのか、ライにはよくわからない。
誘ってない! と希望が言っていたような気もするが、誘っていないのに胸の谷間がよく見えるようにぱっくりとハート型の穴が空いていて、肌が露出したコスチュームを身に纏い、小さな下着が食い込んでむちっとした尻を向けてふりふりと揺らすのかこの男は。どういう神経してんだ。無自覚の方が、よっぽどたちが悪い。
拗ねた希望の相手をするのが面倒で、放っておいてみたら、希望は自分で気持ちを立て直したようだった。そういうところは、楽でいい、と思う。
甘い匂いに脳まで溶かされそうだが、希望の機嫌を取るよりはマシだろう。
「ライさんは性根が腐ってるからモンスターみたいなもんだしそのままで大丈夫だね! この悪魔! 性悪! えっち! スケベ!」
希望は手作りお菓子をテーブルに並べて、両手にも持っている。
まるでそれは希望にとって、武器であり、要塞のようでもあった。
「お菓子いっぱいあるからライさんもう悪戯できないからね! 悪霊退散! ハッピーハロウィン!」
ああ、機嫌直ってねぇなこれ。
ていうかやっぱり嫌がらせかよこのクソガキ。
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