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「禽鳥」 の、おまけの短編

はっきり言って人貴は――不満だった。 鳥斗に対してではない。彼の責任ではないことは、人貴にもわかりきっている。不満の原因は――なぜ禽鳥の繁殖期は、年にたったの二回なのか、ということだ。 最初の繁殖期は、あっという間に過ぎて行った。ほぼ三日間程度であったが、あの間の全ての行為は――人貴にとってまるで夢の中のようで――めくるめく、という表現がぴったりだった気がする。 ――鳥斗は色っぽく可愛くて、おまけにめちゃめちゃ俺を欲しがってくれて――その身体の反応も含めて、最高だった。限界がある自分の……人間の身体が情けなくて、泣けてきたくらいなんだ。できればずっと、悦ばせ続けてやりたかった―― だが繁殖期が終わって鳥斗の婚姻色が褪めてしまった今――彼ときたら、あれだけ情熱的だったのが、いきなり禅寺の修行僧みたいになってしまったのだ。誘ってくるどころか、ソッチの方など全く縁がありませんという風情。人貴は最初こそ枯れ果てていたからほっとしたが、回復してしまえばそうも言っていられなくなる。しかしその気が無い鳥斗を無理に抱くわけにもいかない。一応新婚ほやほやにもかかわらず、ここ数日人貴は枕を抱えて一人悶々と夜を過ごしていた。手を伸ばせば届く所に、鳥斗の柔らかな肌があるというのに……。 次の繁殖期は秋だと聞いた。だがそれまで待てそうにない。このままではつい――浮気に走ってしまいそうだ。 「人貴さん、どうかしたんですか――?」 鳥斗が隣の布団から訊いた。 「えっなに!?俺、なんか言った?」 「はい。今……うわき?がどうとかって」 言われて人貴は慌てた。いつの間にか口に出してしまってたんだろうか? 「いや、なんでもない。寝言!」 「まだ寝てないのに?」 「寝かかってたんだよ、お休み!」 人貴は鳥斗に背を向けて、布団を引き被った。   「うわき?浮気って言うのは……ははは~……俺がしたみたいな奴だ……」 「叔父さんが?」 鳥斗は翌日、龍之に、人貴が呟いていた言葉の意味を訊ねてみたのだった。 「ちゃんとつがいの相手がいるのに、他の相手と仲良くしちゃうってことだよ……それだから俺、桜ちゃんのとこ追い出されただろう――?」 「それってどうしてそうなっちゃうんですか……?」 「ええとー、俺の場合はー……まあなんというか、好奇心?」 「こうきしん……」 「この子と仲良くしたら、どうなるかな、とか、気持ちいいかな?とか思っちゃうわけよ。まあ、男の性、ってやつだよね……で?それが?」 「あ、いいえなんでも……テレビで見たから、です……」 ごまかして鳥斗は龍之の側から離れた。 じゃあ人貴さんは……誰かと仲良くしたいって思ってるってことなんだろうか……?僕以外の誰かと……? そんな風に考えて、鳥斗は悲しくなった。 その晩、先に風呂から上がって、部屋の布団に入っていた人貴の前に、鳥斗はかしこまって正座した。 「人貴さん……」 「んー?ありゃ、なんだ?どうした?」 真剣な面持ちの鳥斗に、人貴はやや驚いた。 「人貴さんは、誰か僕のほかに、好きな人がいるんですか……?」 「ええ!?」 起き上がった人貴に、鳥斗はなおも訊ねる。 「儀式の時に言いましたけど、もし――人貴さんが僕と――もうつがいでいたくないって思うなら、解消するのは人貴さんの自由なんです――だから……もしそうだったら……そう言ってください……」 「馬鹿言え!誰がそんなこと言ったんだよ……」 「でも人貴さん、浮気したいって……」 「いやそのあれは……ごめん!」 突然謝ってうなだれた人貴に、鳥斗は驚いて目を見張っている。 「決してお前と別れたいとかそういうことじゃないんだよ、ただ人間と禽鳥とでは、生理的なモンのサイクルが違う、っていうのかなあ……」 「生理の、サイクル?……」 「うん。お前らは、年に二回しか繁殖期がないだろ?でも人間はさ……しょっちゅう発情してるんだよ……好きな相手が側にいたら、いつでもその……やりたい、じゃなくて、枕を交わしたいって言うんだっけか?お前らの言い方だと」 鳥斗は、大きな目でじっと人貴の顔を見ながら聞いている。 「ああ、でもさ、気にすんな!俺絶対浮気なんかしないからさ!」 「人貴さんが、僕を欲しいって言ってくれるんなら……そうしてください」 鳥斗は突然、パジャマのボタンを外し始めた。 「ほんとは……人貴さんが……浮気なんかしたら絶対に嫌なんです」 裸になってしまって鳥斗は訴える。 「僕は確かに人じゃないけど、半分は人の血が入ってます。だから禽鳥の血だけに、縛られたくない。人貴さんがしたいときには、僕もしたいんです」 「そう……は言っても……なあ……」 人貴は呟いた。鳥斗は外見こそ人に近いが、それ以外の特性は、かなり禽鳥寄りである気がする。そうして人貴は――その部分に強く惹かれたのだ。だが鳥斗は――泣きそうになって訴えた。 「お願いします――」 ここまで言われて――断ったら男じゃないんじゃないか?人貴はついそう思い、鳥斗の腕を掴んで引き寄せ、口付けた。 「うーん、やっぱ、やめとこうよ……」 しばらく鳥斗の肌を探って刺激してはみたのだが、彼は辛いのを堪えている様にしか見えず、やはり反応は思わしくない。人貴は鳥斗に被さったままそう呟いた。 「これじゃなんだか……強姦してるみたいだもの」 「でも……だって……それじゃあ……」 鳥斗は半べそをかいている。 「うーん……あ!そうだ」 見上げる鳥斗に、人貴は言った。 「あのさ、正当な方法じゃないけど……試してみようか……」 翌日人貴は、その手の店に行き、マンネリになってしまったカップルに刺激を与えると言う謳い文句の商品をいくつか調達してきた。そうして手始めに、いわゆる媚薬といわれる物の類を何種類か鳥斗に施して試してみたのだが、やはり人とは体質が違うのか鳥斗に目立った効き目は現れない。それとも……インチキ商品だったか……?とも考えながら、人貴は電動の、小さな機械を手に取った。 「うーむ。あとはこんなモンしかない」 「それ、どうするんですか?」 「ええとその……入れるんだけど」 「入れる?」 鳥斗は手を伸ばして、人貴から殆どそれを奪わんばかりにする。 「こ、こら落ち着け!――ああもう……しょうがないなあ」 人貴はなんだかイライラしてきた。鳥斗本人は熱心なのに……身体がそうはならない。たぶん彼の中の禽鳥側の部分が反発してるんだろうとは思うが……。それともなにか?俺がそんなに……ヘタクソだってのか? 「……なにも……機械まで使わなくともいいだろ?」 「でも試してみないと。もしかしたら……」 人貴は溜め息をついた。……これで駄目ならあきらめさせよう。 鳥斗を四つん這いにさせて頭を押さえつけ、腰を高く上げさせた。その姿を見るだけで人貴には充分扇情的だ。だが鳥斗ときたら神妙にしてるだけで――思わしい反応はしない。こんな格好させられたら、もうちょっとこう気分が出て……恥じらうと言うか、そういう態度があってもいいんでは。――いったい何が足りないっていうんだ?人がこんなに……努力してるっていうのに、俺のやり方のどこが悪いってんだよ? 鳥斗の責任では無いのは重々承知だが、こうやってお預けを喰らっているような状態が続いていると……だんだん腹も立ってくる。 それにしても……浮気しないで欲しいと思ってくれるのはありがたいけど、そんなに俺が信用できないんだろうか?それはそれで問題だ……。考えてみれば今のこいつの行動は、身体で俺を繋ぎとめようとしてるってことで……ひょっとして俺は、そっちの欲望だけのために、こいつとつがいになったと思われてる?それってなんだか……見くびられてないか? 自分の考えた事が原因ではあったが、人貴は徐々に苛立ちを覚え、それに任せて乱暴に鳥斗の尻を割ってその奥の窄まりにいきなり中指を根元まで突き入れた。驚いたのか声を上げて逃げようとした鳥斗の腰を捕まえて、なおも指を出し入れする。 「いた……アッ!人貴さん、それ、痛い!……痛いです」 「そんなはずないだろ!これだけ潤滑剤使ってやってるんだから!」 「でも……あ!やだよそんなの!……」 言いながら鳥斗が人貴の手を押さえようとした。が、そうやって抵抗されるとやけになって、尚更乱暴な気分になり、人貴はさらに強引に、指を奥深くまで挿し入れた。 「機械なんか入れたいって言ったのはお前のほうだろ!ここほぐしとかなきゃ入らないんだから仕方ないだろうが……大人しくしてろ。なんだもうこんな……充分ヌルヌルじゃねえか!何が痛いだよ!」 「え、だって……待ってよ、止めて……!」 人貴の指から逃れようとして、鳥斗がもがく。 「暴れやがって……やり辛いな……」 人貴は呟くと、一旦指を抜き、スーツと共にハンガーにかけてあったネクタイを持って来て、布団の上で鳥斗をうつ伏せに押さえつけ、両手首を後ろ手に縛った。鳥斗はそこで、急に本気で怯えたような顔を見せた。 「人貴さ……これ……?こんな……」 「やっぱりやめとけばよかった、と思ってる?」 やっと後悔したか、と人貴は思った。素直にこっちの言うとおりあきらめればよかったものを、こいつが…… 鳥斗が怯える顔を見るのは久しぶりだ、と思う――考えてみれば、繁殖期の間、俺はこいつに翻弄されてばかりだった。今ようやくこっちが主導権を握ったんだ――自分が――鳥斗の身体を好きに扱える。そう気付いた人貴は酷く気分が昂ぶった。 「ん……っ、ク……う……」 人貴は彼を仰向けにして両足を開かせ、その中心深く指を埋め込み、同時に鳥斗自身もさすり上げてやっていた。指が中を探るように蠢くのに合わせて鳥斗が身体を仰け反らせて呻く。人貴が使った潤滑剤にはある程度興奮を促す作用もあるはずだったが、鳥斗は目をぎゅっと閉じて歯を食いしばり、耐えるような表情をしているきりで、繁殖期に感じていたような快楽は覚えていないようだ。 感触を確かめるようゆっくり中で動かしていたその指を、人貴は今度は急に速度を上げて出し入れした。指を取巻いて噛み締めている鳥斗の入り口を、摩擦で強く刺激してやる。 「どうだ?やっぱりキツいだけか?ここはこんなに――柔らかくなって――きてるんだけどな……」 「あ!んぐ……う……!ん」 鳥斗は答えず、閉じた目尻から一筋涙をこぼしてただ身を捩じらせている。 「なんだ泣いてんのかよ……しょうがねえなあ……。さっき入れてもらいたがってたやつ……そろそろ試すぞ」 人貴は道具を引き寄せ、その小さくなめらかな機械を手に取った。今はすっかりほぐれて柔らかくなった窄まりへそれをあてがうと、鳥斗は濡れた目をわずかに開け、怯えた風に自分のそこを見ていた。その鳥斗を嬲るように――ゆっくりと機械を押し込んでやる―― 飲み込まされるにつれ、鳥斗は再び目を閉じ、小さく呻きながら頭を仰け反らせ、人貴に向かって白い喉笛を晒して喘いだ。そこへむしゃぶりついて軽く歯を立てながら人貴は、今は鳥斗の中に完全に埋められた機械から、繋がるコードの先にあるスイッチを入れた。 「あっ!?……ひッ」 機械が小さく振動し始めたとたん、鳥斗が悲鳴を上げ、ビクンと身体を痙攣させた。 「あ!あッ……や……!なに?これ」 さらに身体を弓なりになるほど反らせている。 「ひ、人貴さ……それ駄目だ……!お願い、抜いて!」 「そんな大げさな……入れたばかりじゃんか……しかも最低レベルだぜ?」 意外な鳥斗の反応に人貴は驚きながら言った。鳥斗の脚を開かせ、奥を覗き込む。コードに繋がる機械は鳥斗の中で微かに振動音を立ててはいるが、ごく小さいものだし、さほどの刺激があるようには思えない。痛いのであれば、さっきの人貴の指の方が余程だと思うが…… 「そんな奥へも入ってないしさ……」 呟きながら人貴は一段階上のレベルにコントローラーを回した。怖くなって大げさに騒いでるんではないだろうか。 「や!やだ……ごめんなさ……やっぱりやめる!い……や!とめ……止めて!」 後ろ手に縛られているため不自由な身体を捩るようにして、鳥斗は人貴から逃れようとしている。 「おっとっと。どこ行こうってんだよ……」 その腰を掴み、引き戻そうとして気が付いた。鳥斗の性器が――反応し出している。 「へえ……?なんだ、機械にやられるのは好きみたいだな……自分で見てみろよ、ほら」 僅かに立ち上がりかけたそれを握り、人貴は先端に指をあてがった。円を描く様にゆっくりなぞる。小さな口から微かにこぼれた雫が糸を引いた。 「……先っぽ濡らしてるぞ?」 「嫌……嫌だァ、こんなの……」 鳥斗は布団に横向きに顔を伏せて人貴の視線を避け、泣き声で言う。 「俺の手管より機械の方に感じるってのが、なんとなく気に入らないけど……」 言いながら人貴は、鳥斗の両の腿をぴったり合うように押さえつけ、さらに軽く圧し掛かるようにして、中へ埋め込まれた機械の刺激が彼の体に深く伝わるようにした。そうしておいてさらにレベルを上げる。 「ア……!?あ、あっ!」 押さえつけられたまま鳥斗が喘いだ。息遣いがさらに激しくなって、人貴の下で身体を波打たせている。 「や……人貴さ……助けて……!」 「どう?いけそう?お?ほら、こっちも……こんなに勃起して……だいぶ硬くなってきてる。なんだよ、やっぱ好きなんじゃんか」 人貴は手を伸ばして鳥斗のそこを撫で上げた。 「止め……止めてください……!もう許して!お願い……」 「じゃあ……いかせてください、って言ってみな……?」 「い、いかせ……いかせてください……!」 鳥斗はすっかり乱れ、我を忘れているようで、人貴の言うままを口にする。調子に乗って人貴は機械で鳥斗を嬲りながら、さらに卑猥な言葉を言わせて楽しんだ。 今では鳥斗は布団の上に座った人貴の膝の上に、命じられて後ろ手に縛られたまま跨って身体を仰け反らせ、腰を前後に揺すって、勃ち上がった自身を人貴の身体に擦り付けていた。 「ほらもっと……腰振れ……どうだ?気持ちいいか?」 「あ!あう……あ!気……持ちいい……」 「もっと、って言ってみな?」 「もっと……人貴さん……もっと」 人貴が操作する機械に、完全に翻弄されている鳥斗を眺めるのは楽しかった。繁殖期の積極的で大胆な鳥斗もいいが、こうして辛そうに自分に服従する姿も魅力的だ。俺って実はサドっ気があったんだろうか……? 「人貴さん……いき……いきたい……許して……もう終わらせて……お願い……」 鳥斗が腰を揺すりながら切れ切れに懇願する。涙を浮かべた目で間近に見つめられ、人貴は顔を近づけて鳥斗に接吻した。鳥斗を仰向けに寝かせ、機械を中からゆっくり引き抜いてやる。手首の戒めも解き、荒い息を吐いている彼に、そのまま自身を打ち込んだ。鳥斗が声を上げる。 「あ……!あ!あっ!ひと……人貴さ……」 「今入ってるの……機械じゃないぞ……いいのか?それでも」 耳元に、口付けながら囁いた。 「機械なんかじゃいやだ……人……人貴さんがいい……人貴さんのが……」 「鳥斗……」 自分に夢中ですがってくる鳥斗が、人貴は可愛かった。愛しかった。 身体を痙攣させるほど感じながら達したあと、放心してぐったりとなり、そのまま鳥斗は眠ってしまった。その彼に布団を掛けてやり、喉が乾いた人貴はパジャマを羽織って部屋を出た。 洗面所の前まで行くとそこに、満ちると白夜がいる。 「ありゃ、なにやってんの?二人して」 人貴が訊ねると、白夜を心配げに覗き込んでいた満ちるが答えた。 「景品で貰った電動歯ブラシ、白夜がうっかり使ったら、なんだか調子悪くなっちゃったんだって……」 と言う。 「ええ?大丈夫?」 「だ、大丈夫です。ちょっと目が回っただけ。それ、電気仕掛けだったんですねえ。知らなかった。私ら、電気は苦手なんですよ……」 「え?電気が?……苦手、なの……?」 「はい……身体の中の……流れが狂うといいますか、めちゃめちゃにひっかきまわされる感じで……具合がおかしくなりますねえ」 「ち、小さいもんでも?」 「はい、小さいもんでも。でもその歯ブラシ、持ってる分には別に問題なかったんですよ……面白いやと思ってうっかり口の中に突っ込んじゃったら……頭がグラグラして」 「粘膜に直接当てたのが良く無かったのかもしれないですねえ。刺激が強すぎて」 満ちるが分析した。 「じゃあもしかして……ずっと入れてたりとかしたら……大変?」 人貴は恐る恐る訊ねた。 「ずっと入れて?歯ブラシをですか?」 「え、ええと、歯ブラシに限らず……いや、まあそう……」 「ずっと……そうですねえ、辛いでしょうねえ。ま、拷問ですかね?」 「ご、ごうも……」 人貴は口をぱくぱくさせながら、部屋へ引き返して行った。 「あれ?人貴様、何かしに見えたんじゃなかったんですかねえ……?」 白夜が満ちるを見ながら、首をかしげて呟いた。 部屋へ戻って、人貴は裸のまま眠っている鳥斗の寝息を確認した。呼吸は特に……乱れてはいないが……ああ、汗かきっぱなしだ……。慌てて人貴はタオルで彼の身体を拭ってやった。電気製品に弱いなんて知らなかった。どうりでスイッチを入れた途端反応が違ったわけだ。拷問だって?じゃああれは……本気で嫌がって……。人貴は思わず顔を引き攣らせた。 そうして、翌朝鳥斗が目を覚ますまで、心配で一睡も出来ないままでいた。 「……あ?あれ?おはようございます。どうしたんですか……?人貴さん、ずっと起きてたの……?目、真っ赤だ……」 目を開けた鳥斗は、すぐ横に人貴が自分を伺うようにして座りこんでいたので、驚いて訊ねた。 「と、鳥斗!お前、大丈夫か?身体……なんともないか?」 「え。なんとも……ないですけど……?」 「良かったああ~……」 人貴は溜め息をつき、鳥斗の前にくたくたと崩折れた。 「ごめんな、あんな……酷いやり方して!ほんとごめん!」 人貴が謝ると、鳥斗はきょとんとした。 「酷い?……あ、あの実は……途中から……全然覚えてなくて……」 「え!ど、どこから?」 「ええと……機械を……入れられたあたりから……かな」 鳥斗は少し、顔を赤くして答えた。 「やっぱり……」 人貴が呟くと、鳥斗は申し訳無さそうな顔をする。 「ごめんなさい……ちゃんと人貴さんのお相手務めようと思ったのに……役に立たなかったですね……」 「そ、そんなことない!すげえ良かった!最高だった!」 「え……ほんとですか?良かった……ほっとした……」 怒りもせずにそう言う鳥斗を見て、人貴もホッとした。 「ごめんな、電気製品、駄目だったんだな……嫌って言われた時、すぐ止めてやればよかったのに……俺ってば、調子に乗っちまって……」 「人貴さんが良かったらいいんです。あ、あの、そしたら……人貴さんがし、したいとき、これからいつでもして、いいですから……き、機械も、大丈夫ですから。使っていいですから……」 恥ずかしそうに、ややどもりながら鳥斗が言う。 「鳥斗お前……ちくしょうもうそんな、健気なこと言わないでいいよ……!」 人貴は鳥斗を抱きしめて叫んだ。 「とにかく俺……鳥斗が一番好きだから!たとえやれなくっても……大好きだから、死んだって浮気なんかしない!だから……安心しろ!」 - 終 -

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