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prologue:blue
空は青い。
遥か彼方の蒼穹を、一羽の鳶が円を描いて飛んでいる。
高台の岩場にぽつんと立てられた白いティピーから、黒い髪を左右で三つ編みに結った少年が顔を覗かせた。
ティピーの中では、羽の装飾を身に付けた白髪の老爺が、パイプを咥えて紫煙をくゆらせている。
「あれはなに?」
彼方の影を指さして、少年は老爺 に尋ねた。
少年がその黒い瞳に捉えているのは、戦車と思しき朽ちかけた鉄の塊だった。
ハプロックは答える。
「あれは、遥か昔、ワカン・タンカに刃を向けた者たちの骸」
少年が尋ねる。
「それは、おろかなこと?」
「それは、哀れなことだ」
少年は首を傾げた。
「あわれなものは、あわれにしんでいったの?」
「全てが哀れとは限らない。答えは心の中にある。死んでいった者たちの魂の中にある。当然、お前の心にも」
ハプロックのしわがれた細い人差し指が、少年の胸を指す。
少年は神妙に頷くと、ハプロックの隣へ腰を下ろした。
「昨夜、夢 を視 たよ」
「それもまた、ここで散った哀れな者たちの骸の欠片」
ハプロックが、少年の手を引き胡座をかいた自分の股ぐらへ座らせる。
「聞かせておくれ、リトルウィチャピ。過去の記憶の一片を」
遠方で、鳶がヒュルリと声を上げた。
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