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第1話 おかしくなった父親

 ギシッ。ギシッ。ベットの軋む音が、無機質に響く。 「あっ。あっ。そこやだぁ。もぉ、やめてっ。ゆるして、とうさんっ。」  そう許しを請うのは一人の少年。 「ははっ。そんなに喘いでおいて、やめてほしいわけないだろう?小百合は嘘つきだな。お仕置きだっ。」  ズッ。 「 ぁっ。」  そして、それを静かに見ているのは・・・ 「兄さん・・・、必ず解放するから。」  暗い瞳をした、少年の弟だった。 side 和磨(兄)  父さんが変になったのは、母さんが死んでから間もない頃のことだった。 「父さんやめてっ。やだっ。いやっ。だれかっ。やだああああああ。」  まず、僕を犯すようになった。 「えらいぞ、秀磨。模試で首席取ったんだってね!先生から聞いたよ。すごいじゃないか。」  秀磨・・・弟を、これまで以上に可愛がるようになった。 「小百合っ。小百合っ。」  僕のことを、見なくなった。  僕も父さんの子供なのに、なんで秀磨の事ばっかり見るの?  僕が母さんに似ているから?秀磨が僕より優秀だから?  気になって訊いてみたら、凄く怒って痛くされたから、もう訊かない事にした。 side 秀磨(弟)  あの男・・・父さんが変になったのは、母さんが死んでから間もない頃のことだった。 「父さんやめてっ。やだっ。いやっ。だれかっ。やだああああああ。」  まず、兄さんを無理矢理犯すようになった。 「えらいぞ、秀磨。模試で首席取ったんだってね!先生から聞いたよ。すごいじゃないか。」  僕を、これまで以上に褒めるようになった。首席なんて、前から取っていたぞ、気持ち悪い。 「小百合っ。小百合っ。」  兄さんのなかに、母さんを見るようになった。  僕たちを、見なくなった。  あの男にはきっと、兄さんが母さんに、僕が息子に見えているんだろう。兄さんは母さん似だから。  大好きな大好きな兄さん。  愛しい愛しい兄さん。  いつか必ず解放するから。あの男から救いだしてみせるから。  だから、どうかそれまで待っててね。僕がその籠を壊す日を。  僕に囚われるその瞬間を。

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