8 / 31
【[急募]三十路で童貞処女なウザ可愛い上司の落とし方 ④ [童話]三匹の子豚 ④】
◆フォロワー様と共通のテーマで書いたお話。
~テーマ【三匹の子豚】~
するする、と。狼はロープを伝って、降下していきます。
「光だ……」
生活感のある輝きに、狼は思わず呟きました。
子豚と会い、言葉を交わせるかもという淡い期待感を抱きながら。
──ゆえに、油断しました。
「な……ッ!」
なんと……ある一点を境に、ロープがヌルヌルになっていたのです!
それはもう、ローションでも塗りたくったのかというほどのヌルヌル具合!
突然の滑りに順応できるほど、狼は器用じゃありません。必死の抵抗空しく、狼は滑り落ちていきました。
「──うわぁあッ!」
ひゅるるるるっ! ぼちゃんっ!
なんとなんと! 煙突の真下には大きな鍋が用意されていたのです!
たっぷりの液体で満たされた鍋の中に、狼は急転直下! 全身ずぶ濡れになります。
「──ぷはッ! な、なんだこれ……ッ!」
狼が水面から顔を出すと同時に、息の合った声が聞こえました。
「「「──かかったなッ!」」」
それはまさに、狼が恋焦がれていた三匹の子豚です。相変わらず、可愛さが世界遺産級ですね。
自分の身になにが起こったのか理解できていない狼は、ただのおうちデートだと思っていたら突然ベッドへ押し倒された女子高生のように戸惑います。
ロープがヌルヌルしていたことや、自分が鍋に落ちてしまったことだけではありません。
──狼の体が、異変をきたしたからです。
セオリー通りにいくのなら、鍋の中には熱した油が入っているでしょう。それによって茹でられ、勧善懲悪。……王道なら、そうです。
しかし、熱くはありませんでした。
──ただ、狼の体が熱いだけです。
急激に喉が渇き、体からは異常な発汗。頭の中がグルグルして、呼吸も乱れます。
「まさか……ッ! この鍋に入っている液体は、毒薬……ッ!」
まるで毒を盛られたかのような不調に、狼は呻きました。
そんな中、子豚たちは声高らかに液体の正体を明かします。
「「「──媚薬だッ!」」」
「──毒薬よりも悪質だろッ!」
なんと驚き。子豚たちは採集した草の成分を上手に調合し、体に触れただけでも【そういう気分】になってしまうほど強力な媚薬を開発してしまったのです!
呼吸を乱しながらも、狼は鋭い視線と声で子豚たちを糾弾しました。
けれど、子豚たちは一切引きません。どう見ても、有利なのは子豚たちだからです。
「さぁさぁ、どうする!」
「本編ですらまだ童貞のままだというのに!」
「こんな番外編で卒業してしまうのか!」
「──そういう下世話な発言は止めてください!」
しかし、このままでは危険だと狼は本能的に察します。
発情した狼の眼前には、恋しくて堪らなかった子豚たち。
……しかも、三匹も! より取り見取り! 記念すべき【脱童貞】の初プレイが四人だなんて、過激すぎます! 全年齢童話もビックリな展開でしょう!
するとイアイが、ひとつの小瓶を掲げました。
「クソ童貞狼よ! 媚薬の効果を一瞬で中和する薬が欲しいか?」
「当然でしょう……ッ!」
狼の怒鳴り声に、シュンタとカチョウが口角を上げます。
「タダでは渡せないなぁ」
「等価交換をしてもらうぞ」
「等価、交換……ですか……っ?」
嫌な予感はしている狼ですが、悩む余地なんてありません。 ほんの少しの理性が逡巡するも、答えはひとつです。
「……要求は、なんですか……ッ」
今にも噛みついてきそうな狼相手に、子豚たちは不敵な笑みを浮かべました。
──そして。
「俺様たちを追い出したマスエに報復する!」
「クソ童貞狼にはその片棒を担いでもらうぞ!」
「いっそ食い殺しても構わんエロ豚野郎だ!」
まさかの親豚報復計画! 豚の天敵とも呼べる狼を利用して、自分の欲望を優先した憎き身内へ復讐しようというのです!
なんて計画的! なんて計算高い! これこそ、狼を家の中まで誘導した真の理由だったのです!
「そんなことをして、誰かに責められたらどうするんですか……ッ!」
子豚至上主義な狼の懸念は当然のものでしょう。
──しかし子豚たちには、親豚であるマスエから授かった【素敵な言葉】があるのでした。
「「「──この国の法では、豚を裁けない!」」」
──【第二章・マスエ豚よ、永遠に】……乞うご期待!
ともだちにシェアしよう!