7 / 7
クローバー
「では、各自分担された花壇の手入れを行うように。解散っ!」
月の最後の金曜日にある、環境美化委員の活動日。
この日はバイトを入れない。
なぜなら、委員会が終わった後、景山の家に景山が運転する車で向かい、朝まで愛し合うから。
初めて肌を合わせてもうすぐ一年が経つ。
進級と共に、委員会活動も終わり、景山のクラスでもなくなる。
それが少し寂しかった。
「こら、ボォーとしてないで手を動かせ」
コツンと頭を小突かれ、後ろを見ると景山が立っていた。
全然気づかない程に考え事に耽っていた。
「今日が最後の委員会活動なんだから、真面目にやっとけよ」
「分かってるよ」
いつもはやらないような失敗を景山の前でやってしまった手前、少し居心地が悪い。
唇を尖らせて、少し拗ねて手を動かす。
「どうした?考え事か?」
「……」
「何で拗ねてるんだ?」
「……」
子供じみた行動をしているのは分かっているけど、どうにも止められない。
ブチブチと雑草を抜いていく。
もう少し温かくなったら、この花壇も花でいっぱいになるはずだ。
「なぁ、蓮弥?」
こういう時ばかり名前で呼んでくるあたり、大人はずるい。
雑草を抜く手を止めて、景山の方に向いた。
「名前、今まで呼んでくれたことなかったのに」
「今だけ特別だ」
「じゃぁ、俺も特別」
「何?」
景山の左手を取り、その薬指にクローバーをくくりつけた。
「クローバー?」
「そう。たった今見つけた四つ葉のクローバー」
「ちょっと恥ずかしいな」
「璃都のこの指は俺が今予約したから」
「へ!?ちょ!?おま…」
「返事はいつでもいいから」
言うだけ言って、恥ずかしくて逃げた。
今の俺の顔は誰にも見せられないくらい真っ赤になっている。
自分でも分かるくらい熱いから、きっとそうだ。
今日、この機会をずっと待っていた。
それがようやく巡ってきて、緊張ながらも伝えることができた。
景山は知らない。
クローバーの花言葉を。
ただのクローバーなら『私のものになって』だけど、もう景山は俺のものだ。
だからずっと探していた。
ようやく見つけた四つ葉のクローバー。
景山の薬指にくくりつけた俺の本当の気持ち。
『真実の愛』をどうか受け取って。
ともだちにシェアしよう!