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第1章 シルヴァリオン 【3】男しかいないなんて聞いてないぉ
『留学先で絶対に彼女を作って、現世では叶わなかった童貞を捨てる!』というボクの野望は早くも打ち砕かれた。
リムジンで到着した学園には男!男!男!
男だけの海が広がっていた。
ショックを受けて立ち尽くすボクを、たくさんの不躾な視線が見つめる。
オーディン皇子と一緒の車で登校したボクが何者か探っているようだった。
女子がいないショックでふてくされ気味のボクは、そんな視線を睨むことではねつける。
『騙された!騙された!』
ボクの脳内はそれ一色だったが、よく考えれば男女共学だなんて誰も言ってなかった、単なるボクの思い込みだ。
入学式で壇上で挨拶をされる、オーディン様のかっこいい姿も見もせずに俯いていた。
オーディン様と同じクラスで、席も隣になったというのに、机に突っ伏してふてくされるボクに話しかける人なんていなかった。
もう1つ勘違いしていたことが発覚した。
それは高等部1年だと思ってたのが、まさかの2年だったのだ。
クラスメイトたちは去年からみんな知り合いで友達で、ボク一人が転校生のような形だったんだ。
(1年前に来ていれば…)後の祭りである。
この学園は初等部が5年間、中等部が3年間で高等部が4年間だという。
そこは日本と一緒にしといてくれよ神様…
朝から不機嫌だった得体のしれないボクに話しかけてくれる人もいなくて、ただ隣の席に座るオーディンだけが、何かと気にかけてくれるのが救いだった。
自己紹介をする機会もなく、ボッチ街道まっしぐらである。
エーリス国にいた頃ボクは大人気で、常に輪の中心で友達や幼馴染に囲まれ楽しかった。
なのにこの国ときたら…やたらと美形はいるし、ボクの美しさも霞むってわけか?
『井の中の蛙大海を知らず』とはボクのことだったんだ。
ボクは機嫌の悪いまま留学初日を終えた。
皇子宮殿に戻ったボクは元気のないまま宿題をし、ご飯を食べ、一人で着替えをし、お風呂に入り、一緒に寝ようとするオーディンをなだめすかして拒絶することに成功して一人で寝た。
『明日こそ誰かに話しかけて友達を作ろう』
3年間の留学生活ずっとボッチだなんて耐えられない。
オーディンのようにチヤホヤされて大人気になりたいとまでは願わない。
数人でいいから一緒に昼食食べたりくだらない話をしたり帰りに買い食いしたりする友が欲しいのだ。
その夜はショックなことがありすぎたせいか、なかなか寝付けなかった。
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