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【side:岡部】  岩片君を助けるため、飛び出して行った尾張君を見送ったもののやはり心配だ。 「尾張君、大丈夫かなぁ……」  科学部の友人から教えてもらった唐辛子スプレーは強力だけど、使った本人にも微量ながらも食らってしまうのが難点なのだけど、言いそびれてしまったし。  やっぱり着いていこうかな。でも、俺なんかがついていったところでなんの力になることもできないだろうし、きっと足手まといだろうし……。  でも、でも。と、一人ウンウン唸っているときだった。 「あれ? 直人?」 「うわぁっ!」  すぐ背後、いつの間にかに立っていた岩片君に呼ばれつい飛び上がってしまう。  ……って、え?岩片君? 「あ、あれ? 岩片君、どうしてここに…………」 「どうしてって、そりゃ俺の部屋だし?」 「いや、だって、でも、今、誘拐……」 「誘拐? 誰が?」  全くなんのことかわからないといった様子で首を傾げる岩片君はどうみても健康そのもので。  それどころか傷一つ見えない。  もしかして、さっきの脅迫状、全部嘘だったってことなのだろうか。  一人あわあわする俺に、岩片君も察したらしい。 「もしかして……誘拐って、俺が?」  言葉に詰まった俺は、返事の代わりに慌てて頷き返す。  それから、俺は自分が岩片君を探していたこと、部屋の中に脅迫状があったこと、それを見た尾張君が飛び出したこと。これまでの経緯を岩片君に説明する。 「……それで、どうしようかしてたら岩片君が戻ってきて……」  終始無言で話を聞いていた岩片君の表情は強張っていて。 「……それで、ハジメはそのVIPルームってとこに行ってるってことか」 「はい……多分四階であってると思いますけど……って、あ!」  言い終わるより先に、岩片君は部屋を出ていってし舞う。  慌てて俺はその後を追いかけたんですけど、岩片君の足はすごい早くて全く追い付けませんでした。あんな岩片君初めてみたので驚きましたが、彼は最初Sクラスだと聞いていたのでああSクラスならと納得する。  それにしても、どうしてSクラスを辞退したのだろうか。  気になったけど、その事についてはまた今度聞いてみよう。  せめて、岩片君の機嫌がいいときに。

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