そして、今日ーーーー 付き合った当初あたりからの嵩への言葉に出せない不満の小さな積み重ねがドミノ倒しのように倒れて心の中の感情が一気に波を打つ。 その原因は昨日念にねんをおしたはずの僕との唯一の約束を「わかった」と了承したはずの男が一日とも二日とも足らずに約束を破ったからである。 そして滝水のように僕の中から流れ出ていった。 何故だろうこんなにも思いに想い恋しかった嵩のことが本当にどうでもいい。なんでこんな恋人もいるのに悪びれもせずコロコロと浮気を繰り返す男なんかに思いはせていたのだろうか。 あぁ、１００年の恋も一瞬にして覚めるとはこのことなのじゃないのか。と俯き、自然と拳を作り力いっぱいに握りしめていた指の力が抜けてきたとき いつもなら僕をちらりと見て浮気相手と過ぎ去る男が、なぜか僕のいつもとは違い俯いて突っ立っている姿に何を思ったのか近寄ってきて顔を覗き込んでくる。 「どうした・・・？」 きっとこんな気持ちになる前ならこの行為はすごく嬉しかっただろう、気にかけてくれているんだと。 今は、ただただ、うっとしいだけに過ぎない。 「…嵩、否、深藤くん」 約束破っておいてニヤケッ面の男に無表情で目線を合わせて名を呼ぶ。 「昨日、僕が言った約束覚えてる？」 あえて下の名から、苗字呼びに言い直した僕に怪訝な表情で見つめてくる深藤に問う。 「…あぁ。な…「なのに、破ったんだね。もういいや…あぁ、そうだ、そっか、察してあげれなくてごめんよ、深藤くんが僕と付き合ってくれてたの、形状で罰ゲームか、何かだったんでしょ？でもそれを言えなかったのは深藤君が心の優しい人だから、僕にはそういえなくて、どうにかこうにか僕に早く自分で気づくように察するように、そうやってかわいい子たちと見せつけて知らせてくれていたのに、僕は、馬鹿みたいに深藤君と付き合えた当初の数日にの時のようにあの幸せだった日にいつか戻れるんじゃないのかって、期待してたんだ。僕も美形だと言われる顔立ちだったのなら、こんなに悩まずしとも、浮気もせずに君は僕を愛してくれていたのかな？記念日だったり、その他もろもろの約束だって、ことごとく裏切れずに済んだのかな？なんて、もう、美形でないから最初から無理な話か、あは、君の優しさに気付けなくてごめんね。まぁ、もう僕に気を使う必要も要らない優しさを分け与える必要なんてなくなったんだよ。よかったね。これからは、気兼ねなく、より取り見取りのかわいい子たちと、楽しい学生生活を歩んでよ。きっとここ数か月僕は君のネックでしかなかったんだと思う。これからは安心して、近づきもしないから。」」 僕のいきなりの追い討ちに近い言葉の数々にただ固まって僕を凝視していた。 そんなのお構いなしに一呼吸おいてから 「それじゃ、ひと時の楽しい夢をありがとう、サヨウナラ。」 なんだかポッカリと穴が開いたように心が無になった。 言いたいことを皮肉ぶってでっも言えたことでそれに対する気持ちはすっきりしたはずなのに… なんだかなんとも複雑な心境で未だ固まっている目の前の深藤とキョトンとして何も言えない浮気相手否、今や深藤の本命かもしれない。そんな少し目の先にいる彼にもぶつからないようにうまく避けながら、その場を僕は後にした。 何気なしに長い廊下の背後から視線を感じるが気になどせずに友である坂東のところへと向かった。