34 / 338

31

「遥人の存在は、色々とややこしいみたいだね。戸籍上では父親の実子ってことになってるけど、血の繋がりは無いんだろ」 淡々と告げられる言葉に、体中から血の気が引く。だがここまでは……祖父の名前を出された時から覚悟していた内容だった。 玲の言葉は真実だ。 遥人自身、それを知ったのは母が急逝した3年前で、戸籍上の父親とは一度も会った事がない。 ただ、その時初めて会った祖父から自分の出自は教えられた。 『あの女も厄介な物を残してくれた。君がここに来たのはどうせ金欲しさだろう? スキャンダルは御免だから金銭面の援助はしてやる。姓は……マスコミに嗅ぎつけられでもしたら厄介だから、これからは御園を名乗れ。だが、もし本当の事を誰かに話したら……分かってるな』 穏やかそうな祖父の外見に安堵の息を漏らした刹那、告げられた棘をはらんだ言葉が頭の中に木霊する。 中学三年生の秋、たった一人の身寄りであった母を突然失った。 母子家庭ながら二人慎ましく生活していた遥人にとって、別れはかなりのショックだったが、現実問題一人になってもなんとか生きていかねばならない。 そんな時、力になってくれたのは、担任の教師だった。 遥人の戸籍を見た彼は、記載されていた父と連絡をなんとか取ろうとしてくれたのだが、結果父親は日本におらず、代わりに祖父が自分を引き受けてくれるそうだと言われた時、遥人は内心緊張しながら天涯孤独じゃ無かったことを嬉しいと思っていた。

ともだちにシェアしよう!