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LOVE&PEACH🍑
「もーもたろさん、桃太郎さん。
...ねぇ、お腰が揺れてるよ?
これってさぁ...、どういう事?」
クククと楽しそうに口角をあげ、俺の唇から口を離し、赤鬼が聞いた。
「し...知るかっ!
離せっ、鬼めっ!
やっぱ成敗だっ、成敗してやるっ!」
半泣きのままずりずりと、腕の力だけで上へ上へと這い上がり、逃れようとする俺...桃太郎。
でもそれを易々と押さえ込み、再度唇をキスで塞がれた。
何がどうして、こうなったかと言うと。
...話は、昨日に遡る。
***
つい、昨日の事。
村から美しい娘達を次々に拐い、村人達の貯えまでも奪ったとされる極悪非道な鬼どもを退治するため、俺は猿、雉、犬の三匹のお供を引き連れて、鬼ヶ島を訪れた。
「にっくき鬼共め...っ!
この桃太郎が、成敗してくれるっ!」
血気盛んに、叫ぶ俺。
なのにそのリーダーであるはずの赤鬼は、洞窟でごろりと寝転んだまま微動だにしないでいた。
クソっ、舐めやがって...。
やっぱ成敗だ、成敗っ!
構えた、刀。
それを見て鬼は切れ長の瞳を細め、ようやくゆらりと起き上がった。
「んー...、桃太郎さん...だっけ?
...それ全部君の、誤解だから。」
赤鬼は面倒くさそうにそう言うと、その場に胡座をかいて座り、大あくびをひとつした。
「...は?誤解って、何だよ?
言い逃れしようったって、そうはいかないぞっ!」
鼻息荒く、詰め寄る俺。
すると赤鬼は大きく伸びをして...そして、言った。
「おーい、娘達!
ちょっと、こっち来てよ。
...君らのせいで、なんかスゴい面倒な事になってる。」
その声に反応し、何処からか沸いて現れた、村の娘達。
「お呼びですか、鬼様ぁ❤」
「あんっ、私が先よっ!
鬼様っ!私めに何なりと、お申しつけ下さいませっ!」
我先にと赤鬼に駆け寄り、甲斐甲斐しく世話を焼こうとする美しい娘達。
...なんだ、この状況。
阿呆みたいにぽかんと口を開け、その様子を見ていた俺に向かい、彼は言った。
「...ね?俺は拐ってなんか、いないから。
勝手に彼女達が、押し掛けて来たの。
しかも家から持ち出したらしい、金銀財宝を手土産にしてさ。
そんなもん鬼ヶ島 だと使えないし、邪魔なだけだから。
娘達共々、全部持って帰ってくれる?
...ホント、迷惑。」
***
今朝謝罪の為、今度は一人で訪れた鬼ヶ島。
土下座状態のまま頭 を垂れ、ただひたすら詫びの言葉を口にする俺。
「誠に、申し訳...ございませんでしたっ!」
俺の倍、とまではいかないものの、1.5倍は優にありそうな巨体。
彼が手にしている金棒でさえも、俺の背丈ほどある。
この男に、こんな細い刀一本で挑もうとしてたとか...馬鹿すぎる。
...しかもそれが、完全なる冤罪って。
申し訳なさと悔しさ、情けなさで胸がいっぱいになり、瞳に涙が溜まっていくのを感じた。
「うんうん、そうだよねー?
俺、なーんも悪くないし。
なのに鬼だって言うだけで、成敗ってさぁ...奉行所に訴え出たら俺、100%勝てるよね?」
「...鬼さんの、仰る通りです。
...悪いのは全て、阿呆で間抜けなこの俺です。」
あぁ...穴があったら、入りたい。
いや、いっそのこと自分で今すぐこの場で掘って、そこに埋まったまま生涯を終えたい。
「すみませんでした。反省...してます。」
ポロポロと、堪えきれず溢れ落ちた涙。
それを見て赤鬼はクスリと笑い、ゆらりと立ち上がった。
そして俺の前に片膝を立てて座り、顎に優しく添えられた指先。
「ごめん、だけ?
誠意が、足りないんじゃないの?」
クククと笑う、美麗の鬼。
「...どうしたら、許して貰えますか?」
泣きながら顔をあげ、聞いた。
すると鬼はにんまりと笑い、言った。
「慰謝料、体で払ってよ。」
「...はい?」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしているであろう、俺。
それを見てニヤリと口角をあげる、赤鬼。
...で、話は冒頭に戻るって訳。
***
「んっ...ふぁ...んっ!
貴様...っ、口を、吸うな...んんっ!」
必死に巨体を押し戻そうと、何度も試みる。
でも、悲しいかな...鍛え上げられた鬼の肉体は、へなちょこな俺の力では微動だにしない。
「まーた口応え、してるし。
君、本当に悪いと思ってる?
...もう一回、やり直し。」
上機嫌のまま、唇をまたキスで塞がれる。
「も...やだ...っ、ごめんなさいっ!
もう...許してっ!」
強引に唇を割り、中に入ってきた舌に舌先を絡め取られ、貪られる俺、桃太郎。
つまりこれが、どんな教訓を持つ昔話かって、言うと。
...事実確認をきちんとせずに、見た目だけで人を判断してはいけないよ、って話。
【完】
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