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16(side三初)※
「もう動かすのやめ、っぁ、っん」
「うん、わかりました」
「っあ、ぇ?」
「動かすのやめます」
「っなぁ……っおま、……っ」
ジュプッ、と強く円を描くようにかき混ぜてから、俺はあっさり手を離した。
お望み通り手を止めてにこやかーな笑顔を見せてやったのに、瞼を閉じて尻を上げ浸っている途中だった先輩は一瞬残念そうな鳴き声をあげる。
お、困ってる困ってる。
欲しがるようになったらあげないのは当たり前でしょ。
平均より頭一つ長身の、満遍なく筋肉のついたしなやかな体だ。
頭髪は硬いのに体毛は割と柔らかくて細い。毛量は多いので、ローションと先走りで湿ると蒸れる。
甘味巡りのために腹部を重点的に絞っているせいか、腰が細く、目の前に晒されると両手で掴んで後ろから乱暴に犯してやりたくなった。
うん。俺はどちらかというと女が好きなバイセクシャルだが、先輩の体つきはなかなかエロいと思う。
困惑の視線とともに桃色に染まり汗ばんだ体が無意識にすり寄せられ、俺はニマ〜っと笑みを深めた。
「い、意地悪ぃ、テメェ」
熱い吐息が耳朶をなぶり、不貞腐れた罵倒に切なさが混じる台詞が聞こえる。
だから俺にそういうのは逆効果だって。
アンタがかわいくないことを言うほど、俺はなんだか愉快でたまらないんだから。
「はっ、なに言ってんですか」
「っ? んッ」
ゾク……と這い上がった興奮に口角を上げ、衝動の赴くまま空いている片手で昨日散々弄りまわしてやった胸の突起をギリ、と捻りながら、ベッドへ押し倒した。
手足首を繋がれた先輩はあっけなく仰向けに転がされ、腹部が圧迫されたのか「ヒィ……ッ」とか細い悲鳴をあげて首を竦める。
「とびきり優しいでしょ? 気持ちいいコトしかしてないし、ね」
「どの口がっ、くっあぁ、ぅ……っ」
混乱する彼に覆いかぶさり、湿った肌に触れた。
指の腹を摺りあわせて尖った突起をこねくりまわしながら密やかに囁くと、先輩は面白いようにビクビクと身悶える。
昨日散々躾けたからなぁ。
元々そんなに乳首で感じる人じゃなかったけど、素質はあったかな。
コールドスプレーで感覚を鈍らせてから、普通だと少し痛いくらいのクリップを挟んでやれば、刺激に慣れてくる。
魔法が解ければジンジンと鈍い痛みを伴う腫れで満たされるのだ。
そこを思い切り擦って、摘んで、捩じ切る勢いで虐めてやれば、先輩は淫らな売女みたいに感じていた。ククク。感度アップのおまじない、かな。
「ぁっ、ぁう……っやめろ……ッ」
そうして調教された乳首への刺激と連動して緩く勃ち上がる肉茎を、もう片方の手で柔らかく扱いてやる。
まだ半端な調教でも、下手くそで不慣れなくせにビッチな体は両方を気持ちいいと認識して余計に甘く喘いだ。
「乳首グリグリされて気持ちぃの? ヤバイですね、先輩。ほら、俺の手が先輩のはしたない汁でビチャビチャですよ。どうしてくれんの?」
「気持ち、よくなっ、あっぃ、う、言うな、いやだ……っ」
「なんで嫌なんですか。尻にあんなおっきいの挿れて腹膨らませて、胸弄られて扱かれるの好きですよね。好きじゃないと勃起しないですよね」
わざと煽るような言葉を選んで、羞恥を引き出す。
マゾヒストの気がある先輩は赤くなった顔を左右に振って否定するが、手の中で硬度を増すモノがなによりの証拠だ。
けれど脆い強情を張ることに関しては一級品の、素直じゃない先輩でもあるわけで。
「あ、ぁ、ン……! っきじゃねぇ、すきじゃねぇ、っよ」
「くく、へぇ……? 好きじゃないんですか」
案の定、意地を張った先輩はグチョグチョと粘着質な音を響かせて扱かれながらも、ツンとそっぽを向いてキツく目を瞑った。
あーあ。だからそういうのが俺には逆効果だって、いつになったらわかんのかねぇ。これだから御割先輩はアホなんだ。
「それじゃあ仕方ないな」
「ぁ、ぅ……っ?」
ニヤリと口角をあげて、両方の手を止めてやった。
間抜けに目を開いた先輩が、無意識のまま物欲しそうに横目で見返す。
「好きじゃないならやめましょうか。気持ちよくないなら、申し訳ないですし」
「はっ、み、三初、テメェ珍しく聞き分けが……」
「そりゃあ俺はイイ後輩ですから。さ、中の出してあげるから尻あげて? バスタオル敷きましょう」
「ぅ……っそ……そうかよ……」
ベッドの足元に放置してあった厚手のバスタオルを取り、赤ん坊がおしめを変えるような格好でクソガキよろしくへの字に口を曲げている先輩の元へ戻る。
なにが不服なのかは、未だ拘束されているために自慰もできず育てるだけ育てられた不完全燃焼の一物にあるんだろうけど……ちゃんと素直にならなきゃ。
ダメだよな。
言わなきゃわかんないってことね。
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