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「それじゃあ、こういうのはどうでしょう」
「は? っ、ん、っ」
不意にそう言うと、三初はプルプルと震えていた俺の体を、服の隙間から手を入れてまさぐり始める。
俺の弱点である骨盤の上や、脇腹、背中、項。
どれもただ触れているだけだが、素肌を直接なでられた。
夢だからか感覚が鈍いので問題はないけれど、ひたすら奇妙でソワソワと落ち着かない。
「ん、っ、ん、なんで触ってんだ、オイ……」
「俺がもし、先輩のことを恋愛的に好きだと言ったら」
「なっ」
「こうして触られるのは気持ち悪いですか? ねぇ」
至極楽しげな、声だった。
昼間考えたことがドッ! と押し寄せ、カァァ、とこれでもかと頬が羞恥で染まる。
俺は昼間、三初が好きと言った言葉を、自分が言われたように感じたのだ。
その上で、どうしてか自分に言った可能性を探してしまった。それはあまりにも恥ずかしすぎる、無様な思考である。
どうしよう。前科があった。
そういえばそうだった。
俺は一度そんなファンタジックなピンク思考に囚われて、三初にドキッとしてしまったのだ。
お陰様であれからずっと、こいつの好きな人が気になって仕方がなかった。胸キュンってなんだよクソ、呪いだろ……!
「普通恋愛対象じゃない人に恋情を向けられて素肌に触られるなんて鳥肌モノのホラーなんですけど……先輩はどう?」
「いや、そ、っ、っ」
「鳥肌チェックは、ん〜……おやぁ? お肌スベスベですねー。汗かいてるからしっとりもち肌じゃないですかー」
「! ち、ちげぇ、っよく見れば鳥肌がわんさかと……っ」
「あらら、ショックだわ。くくく……ねぇ先輩、男も女も先輩も後輩も関係なく、好きですよ。あれ、震えてんの? かわいいね」
「ヒぃッ、三初はそんなこと言わねぇ……!」
「嫌ですか? 俺に好かれるのは、嫌……?」
「うっ……!」
ついには体の下にも腕をいれて両腕で完全にホールドし、三初は足を絡ませて、逃げられないようにする。
片方の手は腹筋や乳首を掠め、もう片方は背中や尾てい骨、尻をなでる。セクハラ親父か。
というか三初は俺を、なんの嫌味もなく好きだなんて言わない。
かわいいなんて以ての外だ。記憶にあるだけでも、嫌味と黙り込んだ俺の口を割る時にしか言ってない。
つまりこれは、思いっきり夢だ。
夢だからこの三初の行動も、俺の深層心理とか記憶とか、とにかく俺に由来するものであるはず。
「そうですよ? 俺が先輩に好きですって言うのは、先輩がそうだったらいいなあとか、そんなことを無意識に考えているからです」
「ふ、っく、やめろっ、離せ……っ」
「んでその問いに口ごもるってことは、つまりそういうことでしょ。ね」
「ンん、んっ……」
至極愉快げなのは結構だが、それよりも俺の急所を太ももで擦るのを速やかにやめろ。
俺は完全回復していないなりに抵抗をしているが、三初の体はビクともしない。
スッと頭を押さえられたかと思うと、熱を持って色づいた耳朶をペロリと湿った舌が舐めた。
だから、口がどこにあンだお前ッ……!
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