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12※
──半時間後。
ズルン、と最後の一つのビーズが体外に引き抜かれた。
後部座席のシートで大きく広げた素肌の足を自ら抱えて他人に恥部を晒す、恥ずかしい体勢。
持ち上げられたビーズと自分からじゃよく見えない箇所がねっとりと糸を引いて繋がる様をまざまざと見せつけられ、カァァ、と熱がこみ上げる。
──俺は結局、一番マシな〝然るべき場所で三初に抱かれる〟を選んだ。
じゃあなんで車内でこんな猥褻行為をしているのかというと、ただの限界。
店を出る前に一度イかされ火照った体を引きずるように車へとたどり着いたあと。
本来ならそのままホテルか俺の部屋か、どこか然るべき場所とやらに連れて行かれるはずだったのだが、明るい・店内・反抗心のコンボから解放された俺が、我慢ならずに後部座席へ三初を押し倒してしまったのである。
みっともなく直接ヤれと強請ることはできない俺としちゃ、三初をその気にさせちまえばこっちの勝ちだろ?
強引に咥えてしまえば、三初のそれは意外にもあっさり反応した。
はからずも本人の調教により口淫スキルが上がっていたからだろうが、若干嬉しい俺がいたのが死にたい案件。
そしてそのツケが、今のこの状況。
一刻も早く奥に欲しいというのに殊更ゆっくりとひと粒ひと粒を引き抜かれたせいで、赤く腫れた窄まりがヒクン、ヒクンと切なげに収縮している。
そそりたった屹立は蜜で濡れ果て、自分で触ることも触ってもらうことも許されず、気が狂いそうだ。
押し倒して無理やりその気にさせた手前文句も言えず、拷問じみた焦らしプレイをなんとか乗り切った体は、季節感もなく汗ばみ熱を孕んでいた。
「んッ……」
空になった口の具合を確かめるようにプチュ、と冷たい指が二本捩じ込まれ、浅いところをかき混ぜる。
「うーわ……ドロッドロで、体液まですっげぇ熱いですよ。俺の指に勝手に吸いついて勝手にうねるし……キツく締めてくるくせに余裕で奥まで拡がるのとか、どういう仕組みなんだかねぇ……」
かき混ぜながら感心したような語気でわざわざ説明する三初。
そうされると俺は羞恥で焦げつきそうな肌を粟立て、今すぐ蹴り飛ばして逃げ出したい衝動に駆られた。
それでも体は、トロトロに蕩けた肉孔の柔らかさを味わう指にもっとと絡みつく。
三初がふ、と微かに笑い、三日月形に歪めた口元で舌を出した。
「ふ、しくったな。もう一本買っとけばよかった。ローション追加してまたビーズ詰めてバイブさせながら引き抜いてやったら……イカれます? 先輩の理性」
「ヒ……ッ」
ヌル、と指を引き抜かれながら至極残念そうにそんなことを言われ、喉の奥が勘弁しろよと暴れそうに引き攣る。
これ以上は、本当にダメになる。
今は下肢のどこを触っても感じてしまうほど、敏感に成り果てている。
三初のものを舐めながら、ビーズのスイッチを入れたり切ったりされた。
そこからひと粒ひと粒の形を意識させるように、ゆっくりと引き抜かれて、やっと抱かれる、と期待している。
「ンなの、も、嫌だ、嫌、だって」
とろ火で炙られるような焦らされ方を思い返して、二度とごめんだと、熱に浮かされた頭をグラグラと左右に振った。
駄々をこねるように呻き、キュッ、と解れた後孔を収縮させる。
「そう? 嫌ならしませんけど、あんまイヤイヤばっか言われたら萎えるなー」
「っちが、っ焦らされんのが嫌だって……っお前の早く、挿れて、くれ、中に、……っ」
「ふっ……かーわい」
萎えると言われて焦り、俺はハッキリは言うまいと意地を張っていた言葉を反射的にポロリと吐いてしまう。
馬鹿にされると思ったのに、三初は笑みを漏らして小さくなにかを呟き、なぜか俺に覆いかぶさって汗で湿った額にキスをした。
ずるい男だ。
そんな舌打ちとさして変わらないリップ音一つで、俺の反抗思考が溶け消える。
散々追い詰めて追い詰めて冷たく虐めたくせに、〝よくできました〟と褒めるようにキスをされると、全部許してしまう。
そうやって甘い気分になってしまうほど眉間にシワの寄った不機嫌な表情をしてしまう俺は、頭の横に添えられる三初の腕に額を擦り付け、「早く、欲しい」と重ねて強請った。
こぼしたついでに強請ってやるよ。素面じゃやんねぇ。
欲望に負けて、あとはまぁ、惚れた弱みってやつで。俺は負けてばかりで悔しい。
ねっとりとローションを垂らして呼吸する後孔に待ちわびた先端があてがわれ、熱棒が肉をぐっと押し開いていく。
「ふ、……っぁ、……っ…ん……」
それだけで酷く心臓がドクンドクンとうるさく鼓動し、腰の辺りが痺れて、期待で呼吸が荒くなった。
……チクショウ。
薬や時間で嬲られていたとは言え、触れただけで中がうねるような救いようのない体にされて、この先本気で俺はどうなってしまうのか。後戻りできない時、たまにそう思う。
三初は俺を手遅れに弄んで、そして最後はどうするのだろう。
ヌルルル、と自分の中に突き込んでくるモノを奥に誘い、強く食い締めて逃がさないよう襞を絡ませる。
「は……っん、……ん」
「っと」
漠然とした不安が突然胸を過り、俺は抱えていた自分の足を離して、空いた腕を三初の背へ引っ掛ける程度に回した。
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