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 車の窓ガラスは熱気で曇り、カーナビの青い照明しかない車内は、外からは全く見えないだろう。  長く強いられた我慢を発散させるように求め続けると、限界が近いらしい三初は、はしたなく濡れそぼる俺の肉棒を扱きながら耳朶にガリッ、と歯を立てた。 「痛、っひ、あっぐ……っ」 「今日ね、ゴム着けてないんですけど、なんかもうアレなんで、このまま出していいですか? んで絶対中身漏らさないように、意識して帰ってくれます?」 「なん、っ嫌、だ、嫌に決ま、てっ」 「じゃあ先輩がデキたら、責任取りますから。それならいいでしょ。いいですよね? でないとやってらんなくて、あんたの耳、噛みちぎっちゃいそう……」 「っ」  少し痛いくらいの力で噛まれる。  脅しにも似たそれは、三初なりのオネダリなんだろうか。ふざけんなとは思う。  けれど雑に言われた責任を取るという発言に、ぎゅっと目を瞑った。  腹の奥がキュンと欲しがる感覚。  ヤバい。俺は、いいって、思ってる。  責任の意味は違うし、俺はそういう意味でデキたりしない。テキトーな宥め方に絆されていることは明白だ。  それでも責任取んなら別にいいかと思わせるのだから、コイツはもうそういうタチの悪い悪魔なのかもしれない。  だが、しかし。 「はっく……っい、い……っなかだ、して、も」 「ふ……先輩の変態なとこね、俺はすごく、気に入ってますよ」 「っ……いい、そのまま、……欲しいっ」  自分でも恥ずかしいと感じる体も、コイツは気に入ってくれているようなので──ある意味で好みに近づいているのでは? と結論づけた。  それなら男として最低なワガママくらい、聞いてやってもいいだろう。 「あー……っ、凶悪、マジ、で」 「ヒッ、ぁ、ン、ん、っ……!」  ドクッ、と奥に注がれる迸りの熱や重みをいつもより強く感じる。  同時に張り詰めた勃起を擦りながらもうすっかり弱くなった先端の粘膜を指先で扱かれ、絶頂の快感に巻き込まれた。  三初に触れられるとあっけなく精を溢れ出す。そんなこと慣れたかなかったが。  むず痒い射精の解放感と、脳が痺れて体の小刻みな痙攣やのたうつ筋肉をコントロールできなくなる絶頂感。  指先から脳髄までイった。  ジンジンと俺を蝕んで仕方がなかった下腹部の疼きは、未だにわだかまったまま。 「ふっ……ぁ……」  止まることなく繰り返された律動が止まり、自分も達したことで緊張が解ける。  しがみついていた腕がドサッ、と滑り落ちた。シートの上でしばし痙攣しながら、俺は三初の顔をぼんやり見上げる。 「ん……、ん……? もう終わりですよ、先輩。明日仕事なんで約束どおり一回だけ、ね」  ポタリと頬に一粒、汗が落ちた。  涼しい顔しかしない男も、こういう時ばかりはヤニ下がった面差しに艶っぽい熱を帯びさせている。  散々嫌がらせをさせられはしたけれど、俺との約束は守ってくれるらしい。お好み焼きだって奢られた。  おかげで快感で流されやすかった体は強制的に我慢を覚えさせられ、同時に恐ろしく感度をあげられているのだが。  けれど今は文句を言う気にならない。  ハァ、ハァ、と呼吸は乱れたまま、内壁は足りないとばかりにギュウ、と締めつけている。収まりなんかついていないのだ。 「ちょっと、コラ……」 「ん、ン……終わり、嫌だ、足りねぇ……」 「……ふ、ククク」 「もっかい抱け、……責任取れ、よ」 「今日は嫌々ばっかり言いますね。口の利き方のなってねぇ犬だなぁ」 「あ……ッ」  三初の首に腕をまきつけてそっぽを向きながら強請ると、小馬鹿にするように笑い、足を抱え直された。  中に挿っていたものの質量が増し、体勢を整えられると粘膜が擦れて息が漏れる。  機嫌のいい三初は萎えきらない俺の肉棒に手を添え、クチュクチュと巧みに扱きながら耳元にそっと唇を寄せる。 「俺が責任取るんだから、他の飼い主にこういうことされても、流されちゃダメですよ? アホちょろい駄犬なのがあんたの美徳ではあるけど、放し飼いも大変なんですから。……ね」  ──いつかこの洗脳じみた声に逆らえる日が来ればいい。  そうそう叶いそうにないことを、割と常日頃から願っている俺であった。

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