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 内ももを擦って身じろぐと、三初は掴んだ髪をグッと強く引いて、続きを促すようにまた深く押し込んだ。 「ごほ、っ……っふぉぃ」 「イイ顔しちゃって。意地っ張り狂犬生だし、征服されんのが興奮すんのかねぇ……こんなゲロ不味いし疲れること他人のペースでされるほうが好みとか、あんたヤバいですよ」 「んふぁ……?」 「んー……じゃ、こうしましょ。先輩、キスする時に上顎擦られんの好きですよね」 「あ、っみは……っん、ンぁ……っ」  いきなり頭を固定されたままカリ首で上顎をなぞられ、俺は思わず手を離し三初のシャツにすがりつく。 「ちゃんと思い出しながらシてくださいよ? 俺のキス。……くくく。これから俺のを舐めるたびに、気持ちいことを思い出す脳ミソにしてあげますんで」 「んぶっ……ふっ、っぐ、っ……」  すがりついたものの愉悦を味わうようにうっそりと笑まれると、結局いつも通りになすがままじゃねぇか! と、納得いかない怒りが沸いた。  とはいえ、文句を言おうにも口は塞がれているのだ。  舌と竿を絡めるようにユルユルと出入りを繰り返され、溜まった体液を飲みこむ。  たまに頬の肉をこそぐようにわざと照準を狂わされれば気まぐれなキスを思い出して、無意識のうちにチュ、と物欲しげに吸いついてしまった。  別に俺がどうこうってわけじゃない。  三初が言葉にして〝思い出せ〟と言うから、頭が勝手にリフレインしてしまう。  心からそうとわかっているが、単純な俺の頭と体を理解して取り扱うこの男には、シンプルに殺意が湧く。クソ、せめて髪掴むのやめろ。反撃したくても動けない。 「ここが好き? 舐めながら自分で当てて」 「ふ、んぁ……」  そうやって時間をかけて与えられるがまま肉棒で口内を犯された俺に、このド鬼畜ファッキン暴君は、今度は自分で喉や頬の内側に擦りつけながら舐めろと言った。  言葉と小手先の動きだけで、三初は巧みに俺を弄ぶ。  アホな俺の体はなすすべがない。  放置されたままの自分の屹立がジクジクと膿んで糸を引き、シーツにシミを作る。 「はぁ……ん、ぅ」  朝日が差し込むベッドの上で、俺は男の屹立を口淫して勃起していた。 〝男のモノをしゃぶって感じるようになんて、なるわけがない〟  そう思っていた舌の根も乾かぬうちに、この体たらく。面目不甲斐なし。穴があったらもっと深く掘って埋まりたい。  けれど俺の口で三初が感じていると、なぜかすこぶる興奮してしまう。三初にキスをされた時を思い出して舌を絡めると、腰が甘く痺れて下腹部の奥が疼くのだ。 「ン、くぅん……ふぁ、ぅ……」  ギュ……ッ、と強く黒いシャツを握る。  呼吸が荒くなるほど発散されずに放置されたままで物足りない。記憶で嬲られ、期待感だけが高められてしまった。  早くコレを挿れてほしいだなんて、重症だ。頭ごとイカレちまった。 「はっ……キス、気持ちいい? じゃ、いつもそのあとどうしてるか、そのお粗末な頭で覚えてますか?」 「んふ……、は、ぁ……?」  熱に浮かされた表情で舌を動かす俺に、興奮した吐息混じりの声がせせら笑いを含めて降ってくる。  夢中でしゃぶってきたので顎が疲れてきた。是非噛みついてやりたい。  けれど三初が俺の口淫で興奮しているのは、やはり気分が良いのだ。  自分がしゃぶられたりキスをされたりした時のことを思い出しながらすると、どうにももう止めようとは思えなかった。  チュプ、とこの先を求め口を離し、言われるがままぼんやりとおぼろげな記憶を引っ張り出す。  普段か。普段は……俺が嫌がると、大抵キスで抵抗力を削がれる。  でなければ恋人同士でもない俺たちは、あまり舌を絡め合うようなキスなんてしない。そのキスのあとにされることといえば── 「ヤる、ために……カラダ触ん、だろ……っんぐ、う、ふ」 「正解」  ご褒美とばかりに喉の突き当たりを抉られ、ゴホッと咳き込んだ。クソ、でけぇし、長いんだよ。息できねぇだろアホ。 「じゃ……どこ触ります? 先輩の触られたら気持ちいとこ、触りながら俺のも気持ちよくしてくださいね? 下克上、頑張って」 「ん……ッ、く、意地、悪ィ……ッ」  今度は勝手に突っ込まれないよう、顔を背けて悪態を吐く。  頬をヌルヌルと擦る竿に煽られ、根元に添えていた手でグッと押し返した。人の顔で遊ぶな性悪が。

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