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次いで俺は次の企画の準備であるアンケートまとめやモニター選出などで、死にかけている山本に声をかけた。
顔を赤くして必死に仕事をしていた山本の顔色が青くなったが、知ったこっちゃねぇ。
新入社員たちのあの押しつけを、三初は是としたのかと聞いた。
山本曰く、三初は一度はやり方を教えてマニュアルも渡し、二度目にわからなければそのへんの先輩を捕まえろと言ったらしい。
しかし後輩連中は結局、誰にも聞かず。
かといってわからないからとやらず。
なぜなら、連中はメモを取っていなかった。
覚えているなら問題ないが、覚えてもいなかった。
三初の仕事が早いので先輩たちも資料を待つといった時間が少なく、そもそもみんなが必死なので忙しい。
そんな中、締め切りギリギリにお助け係である総括、三初のデスクへ、後輩連中はやってきたのだ。
山本は固唾を飲んで見守っていたが、三初は静かに「まだ締め切りは今日一日あるけど、次は覚えられんの? あんたら」と尋ねた。
すると連中は「誰にも聞けなくてわからないので、先輩ならって……三初先輩、お願いします」と言ったのだとか。
いや、今こっちから聞いてんだろ、と。
この回想を聞きながら、俺のこめかみには青筋の三本目が出現。
山本は三初を知っているので、どうせ「なんで?」と言うと思った。
だが三初はなにも言わず、デスクをトンと叩いて仕事に戻る。
それから、三初のデスクは毎回書類タワーのオフィス街と化したそうだ。
ここで俺のこめかみには青筋の四本目が。
というか、限界値だ。
ブチギレた俺はアホを全員呼び出し、説教と共に強制勉強会。
研修が終わって実践の最終段階も経験させてもらって、課内全体がくそ忙しい時に一通り教えてもらって、マニュアルもあって、聞いていいとまで言われて。
それでもやらないだなんて、社会を舐めすぎなのだ。
初めは休日出勤させるなんてパワハラだとかなんとか言っていたが、「もともと自分の仕事なのに全部置いて帰ったらそりゃ呼び出されるだろふざけてんのか」と言えば黙った。
つきっきりで教えて、時にキレ、時に睨み、スパルタ教育を施す。
基本は覚えて損はねぇ。
こいつらのためでもある。
ただ……俺は器用じゃないから、個人的な怒りは混ざってたかもしれねぇけど。
俺がムカついたのは、〝三初ならできるだろうから〟という、頼ると押し付けるを履き違えたことをし続けたからだ。
三初にしかできない、という頼ることと、三初のほうができる、という押しつけは違う。
もちろん三初は押しつけに気づいているだろう。
表向き怒っているように見えない男だから、相手が気づかなかっただけ。
残りの労力で合理的な解決を導き出し、自分がやったほうがストレスも少なくて早いと考えた。それはわかる。
だが、俺は合理的に考えられない。
俺はムカついた。今後もそうされたら、きっと目の前でキレる。
そういう理由だ。
土日を経てきれいさっぱり終わらせた頃には、俺はイイ報告ができると思っていつつも、理由は絶対に言わないと誓った。
なんというか、冷静になると恥ずかしすぎる。
恋人利用されてキレるとか、やべぇだろ。
いや一応四年コンビだった大事な後輩でもあるから、そういうあれだけどな。うん。
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