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 ここぞとばかりに力を込めて素早くハンドルを回すと、すぐにグラスの中は山になった氷でいっぱいになった。  わかっていたが、簡単だ。  しかしアイスクリームコーナーで買って食べるかき氷とは、テンションの上がり方が全然違う。  山盛りグラスを二つ作り、一つにはみぞれシロップを、もう一つには抹茶シロップをかけた。  抹茶には更に茹で小豆と練乳をトッピング。  一杯目は豪華にいくと決めてたかんな。二杯目からは糖分控え目だ。 「オイ見ろよ! どっから見てもかき氷だぜ!」 「かき氷機ですからねぇ」 「落ち着きすぎだろ。風情のねぇやつめ。写真撮る」  三初にみぞれを渡したが反応は案の定いつも通りだったので、俺は三初を放って自分の自家製宇治金時をパシャリと撮影した。  それと同時にキッチンからもパシャリとシャッター音が聞こえた気がしたが、気のせいだ。  顔を上げて三初を見たが、「なに?」とニンマリスマイルで首を傾げられただけで、特に変化はない。  マジでおもしろくねぇ反応だな、チクショウ。  イベント事やミーハー系の俺が楽しいことは、だいたい三初はノってこねぇんだ。  リアル脱出ゲームやらVRアトラクションやら芸術関連やら、三初が好きな頭を使うものは俺はつまらない。 (まぁ結局はどっちも一緒にするから、別に問題ねぇんだけどよ) 「ちょっとジャリジャリしてんの、うまい」 「フワフワしてねー」  くだらないことを考えながら初挑戦のかき氷を食べる。  味はなかなかうまい。  カップのかき氷と屋台のかき氷の中間くらいの食感だ。  ジップロックに入れた牛肉の塊を揉んでいた三初も俺お手製のかき氷を食べつつ、失礼な感想を言った。たまには褒めろよ捻くれクソ野郎。  ムカつく発言を無視して宇治金時を掻き込むと、頭にキーンッと刺すような痛みを感じ、悶絶。  それを鼻で笑われた俺は、溢れんばかりに山盛りのかき氷をカシスシロップと焼酎で割って、氷責めを開始したのだった。  ──それから。  日常と変わらないが少しスペシャルな俺の誕生日は、つつがなく進行した。  俺が作る氷がかき氷のカクテルを全て飲みながら料理をする三初をからかい、反撃を受けてマルイを盾に威嚇したり。  ナガイのケージを掃除するからと言って俺に巻き付け、硬直する様を写真で撮られて壁紙に設定されたり。  うん。よく考えるとつつがなくなかった。  なにを考えているのかわからないナガイは俺の肩と腕に乗って大人しくしていたが、なんせ一メートルを優に超えている大蛇である。  普段は三初が肩にかけて掃除をしていたのを知っていても、ハンドリング初挑戦(強制な)の俺は死にそうな顔をしていた。  バカでかいゲージの主は、つぶらな瞳の温厚な蛇。  誕生日に死の危険を感じたのは初めてだ。  もう二度と味わいたくない滑らかな手触りである。

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