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「ね……先輩、なにが好きなんですか?」 「なにって……そりゃ、好き……冬賀だ、ろ……」 「…………」  ピクッ、と無意識に片眉が上がった。  手を強く握ると、反射的にかもしれないがやんわりと握り返してくる。その甘ったれに免じて、不問にしてあげることにした。 「どういう好きなのかねぇ……」 「冬賀は……ともだちでよ……チョコのともだち……だか、好き……」 「そ?」  手の力を緩める。  チョコをくれる友達だから、赤毛の友人が好きらしい。  緩めてもにぎにぎとしてくるので、その手を引き寄せて頬に当てた。  熱い手だ。この人は自分より体温が高い。触れていると心地よく、もっと熱くさせたくなる。  予想したものと好きの種類が違ったので、機嫌よく指先にキスをし、ゴロゴロとすりつく。  三初は年季の入った天邪鬼であるからして、ギャラリーもなく本人に伝わらないのであれば、スキンシップが好きなのだ。特にキスが好きだ。  意味はないが触れていたい。飽きたら離れる。勝手に触られるのはノーサンキュー。相手の都合はどうでもいい。 「おしゃべり、しようか」 「しようかよ……うぅん……」  ごつい指にまとわりつく飴細工じみた爪に軽く歯を立てて、噛み付くふりをして笑った。  三初の取扱には細かなルールがある。  御割はほとんどそれを無視できる、奇特な存在だった。……特別、とも言う。 「周馬先輩は、友達ね。じゃあ他は? 最近近くにいた人、どう思う?」 「あぁ……? ほか……あー……出山車、かわいい……」 「なるほど。それはどういうかわいい?」 「かわ……狸、みてぇ……あと、弟……」 「年下でペットな存在か。犬が狸飼ってもねぇ……釘は刺さなくていいか。他はどう?」 「犬がたぬ……ぁ、ん……あれ、中都は……わけわからん……でも、かわい……いいやつだよ、なぁ〜……」 「あらら。あれもかわいいの? うぜぇけどなぁ。好きじゃないですか?」 「すき……ちげぇし……」  御割の手の甲に頬を寄せて、むにゃりと緩む寝顔を観察する。 「んっ……俺は、三初が……」 「ん? 俺?」  自主的に自分の名前が出され、首を傾げた。先を促す前に語り始めるとは、飼い犬らしいことである。 「三初……が……」 「俺がなに?」  そう尋ねる声が微かに弾んでいることを、眠っているこの人は気づいていない。  御割は「うぅん……」と唸り、眠たげに身をひねって三初の首を抱き込むように腕を伸ばした。 「も、っるせぇなぁ……」 「っと」  逞しい腕に捕まえられたせいで、マヌケな寝顔が至近距離にやってくる。  強面と言われるに値する太い眉に三白眼、凶悪な口元が、ゆるりとやわらぐ無防備な寝顔。 「俺は三初が一番好きなんだから……ガタガタ言うんじゃねぇよ……」  ……やはり、さっさと両手を縛っておくべきだった。 「……はぁ……」  御割の寝顔を前に、三初は心底そう思って、静かに深いため息を吐いた。  眠っている時ばっかりストレートに表現してくるこの人の言葉は、いつも心臓の内側の小さなつぶを、プチンと潰す。  まんまと黙り込みそうになるほど効果は抜群なのだが──やられっぱなしは性にあわない。 「ね、先輩。ガタガタ言うから……もっかい言って?」 「んっ……」  負けず劣らず天邪鬼なこちらとて、眠っている時くらいしか素直に甘えてなんかあげないのだ。  無防備なのをいいことに好き放題御割の唇を蹂躙しつつ、三初は心で、ペロリと舌を出した。  了  いつも誰殴や他の作品、恐れ多くも木樫を見守って下さりありがとうございます!  嬉しさがモコモコと湧いてくる。短い話ですが、お礼になっていれば幸いですぞ(照)  これからも、よろしくお願いいたします!  木樫

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