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躾
【躾】(尿道プレイや暴力的な描写があります!)
「俺のこと、本当に好きなら出来るよな。まあ、出来ないって言っても、してもらうけど」
薄く整った唇が、月明かりの中綺麗な弧を描いていくのを瞳に映し、悪魔がもし存在するなら、こんな容姿をしているのではいかとぼんやり考える。
今の時刻は深夜二時。
自分たちがいるこの公園には街灯が一つあるだけで、周りを木々に囲まれているから、陽光の射す明るい昼間とは全く逆の世界に見えた。
「わかった」
意を決して未玖 が答えれば、予測していた答えとは違っていたのだろう…… 圭は僅かに目を細めるが、興が冷めたとは言い出さない。
「つまらないから止める」と彼が言い出すことを、少しだけ期待していただけに、未玖は内心落胆するが、表情には一切出さずにコートのファスナーへ指を伸ばした。
「下も、全部だ」
「…… ッ」
言われるがまま、中に着ていたシャツとセーターも脱ぎ捨てると、上半身に纏う衣類はなくなり裸になってしまう。二月中旬の真夜中に、この格好はかなり寒いけれど、さらに下まで脱げと言われて体がカッと熱を帯びた。
「そんなこと…… 」
「できないなら、脱がせてもらうか? 」
微笑みながら告げてきた彼は、傍に二人いる舎弟に向かい目配せをする。それだけは嫌だったから、未玖が「やるから」と小さく返せば、動こうとした舎弟たちを右手を軽く上げて制した。
―― こんなのは、いやだ。
ジーンズの金具を外しながら、逃げる手段を考えるけれど、彼らの肩書を知っているだけに、下手な抵抗などできやしない。
「なあ、圭、もう止めよう。俺が悪かったから、だから…… 」
「未玖の言い訳は聞き飽きた。罰を受けると言ったのは自分だろう? 」
あくまで笑みを浮かべたままだが、こちらを見る目は少しも笑ってなどおらず、冗談が通じない雰囲気を感じた未玖は唾を飲み、彼の機嫌を損ねないように、ノロノロとジーンズを脱ぎ始めた。
***
彼、神澤圭(かんざわけい)という人物と、未玖が知り合いになったのは、一年前の冬の日だった。場所は、今自分がいるこの公園。時刻は夜十時くらいだったと思う。
その時実玖は近くのコンビニで買い物をしていたのだが、ヤクザが喧嘩をしていると聞いて、見に行こうなどと考えたのは、ちょっとした好奇心だった。
高校時代漫画などを読み、そんな世界に憧れはしたが、実際に道を踏み外すことはないまま大学生となり、持ち前の人懐っこさと、あえてチャラそうに見せた外見で、遊び相手に困ることもなく、後腐れのないセックスを奔放に楽しむような生活を送っていた。
そんな自分に満足していたはずの未玖が、何故わざわざヤクザの喧嘩を見に行ったのかと問われれば、理由はうまく言えないけれど、自分とは違う世界に住む人たちを見てみたかったのかもしれない。
予想外だったのは、そこで見かけた一回り以上年上のヤクザに一目で心奪われたことだ。
公園の周りに集まった野次馬たちの殆ど全てが、彼に目を奪われていたのではないだろうか?
それほどに、彼の容姿は周囲から浮いていた。後に、彼がヤクザの若頭だと知った時も、そんな気はしていたから驚きもしなかった。
「俺は、全部って言ったはずだが」
昔のことを思い出しながら、未玖が寒さに震えていると、容赦のない命令が圭の口から放たれる。
彼の周りを固める舎弟の無言の圧力に抵抗できる強さもないから、未玖はゆっくりボクサーパンツを脱いでとうとう全裸になった。
こんな時間だが、人が通れば通報されるに違いない。
それだけ彼を怒らせた自分が悪いのは分からなくもないが、それにしてもやりすぎだろうと思わずにはいられなかった。
「あの木の所まで行こうか」
公園の真ん中にシンボルのように植えられている大きな木を指さしてから、圭がこちらへと歩いてくる。
目を凝らしてよく見てみると、太い枝からロープが一本ぶら下がっているのが見えたから、震える声で「殺すのか? 」と尋ねると、「どうかな」と答えた圭に腕を掴まれそうになった。
「ムリ、ムリだから」
掠れた声をどうにか絞り出し、未玖はとうとうここから逃げ出す決意をする。
前々から怖いと感じることは度々あったけれど、自分に向けたものでなければ、それすら憧憬に変換された。
だけど、これは駄目だ。
怒った圭の容赦のなさを知っていたのに、なぜ自分だけは大丈夫などと安易に思ってしまったのだろう。
「無駄だ」
咄嗟に走ろうと試みたけれど、すぐに舎弟に取り抑えられ、ならば大声を出して助けを呼んでやろうと考えたが、実行する前に唇を布テープで塞がれた。
「ん…… ぐぅっ」
―― あんなこと、するんじゃなかった。
引きずられるようにして、木の前まで連れて行かれる間中、愚かな己の行動を悔いたが、もう全ては過去のことだ。
そして、たぶん未来はもうすぐ断たれる。
ぶら下がっているロープの片端を手にした圭が、それを首へと巻き付けてきて、殺されるのだと思った未玖の瞳から涙が溢れだした。
「死にたくない? 」
涙を指で拭いながら、抑揚も無く圭が訊いてくる。
声を奪われた未玖は何度も頷くが、薄く笑みを浮かべた圭は何も言わずに立ち上がった。
「やれ」
その一言で、一人の男がロープの反対端を持ち、それをゆっくりと見せつけるように引き下げる。
同時に首が苦しくなり、少しでも寿命を引き延ばしたくて、未玖は立ち上がろうとするが、膝がガタガタ震えてしまい、ろくに力が入らなかった。
「想像以上にヘタレだな」
すると、急に弱まった首の圧迫と、呆れたような圭の声。舎弟たちの嘲笑の声もどこか遠くから聞こえてくる。
「未玖、脚開けよ」
腰を抜かして座り込んでいる未玖の膝をつま先でつつき、圭がそう命じてきたから一も二もなく脚を開くと、無防備に垂れ下がったペニスをじわじわと踏みつけられた。
「んっ、んうっ!」
「自分が漏らしたの、気付いてるのか? 」
痛みに呻いて視線を落とせば涙の幕の向こう側、座り込んでいる自分の周りが濡れているのが見て取れる。そして、そこからゆっくり視線を上げると、自分のペニスを踏みつけながら、
「そんな簡単に殺してやる訳ないだろ」
酷薄な笑みを唇に浮かべ圭が冷たく告げてきた。
そこからが、未玖にとって本当の地獄の始まりで―― 。
「んんっ…… ぐぅっ!」
首に巻かれた縄を外して貰うことは叶わなかったが、枝から降ろされた長い縄は、未玖の体へと巻き付いている。首から背中へ落とされたそれは、背中で腕をひとまとめにして、そのまま体の前へ回され胸の上下を通っていた。
さらに、余った部分は下へと降ろされ、両方の足の腿と足首をひとまとめにして縛っている。
砂の上、仰向けにされた未玖の姿を、カエルみたいだとあざ笑いながら、圭と舎弟は執拗なまでにその体へと愛撫を施した。
ボコボコにされてしまうことしか頭の中になかったから、最初はパニック状態だったが、縄によってくびり出された乳首を指で捏ねられたり、萎えたペニスを擦られたりしているうちに、体の強張りが徐々にとけ、体が熱を帯びてくる。
元々、快楽に弱い性質なのだ。
だから、圭と付き合いだしてからも、女性の誘いを断れず、それがバレると、
「ただの性欲処理だから、男は圭だけだ」
などと言い訳をして、うまく宥めたつもりでいた。
実際にそうだったのだ。男を好きになったのは、圭が最初で最後だと思う。
彼がヤクザの若頭で、残酷なことも平気ですると頭では分かっていても、二人で居るときは無口で奥手な大人の男だと思っていた。
―― それに、どうしていいか分からなかった。
持ち前の懐っこさを生かし、彼と恋人になれたはいいが、その先のことはあまり考えていなかったから、セックスしそうな雰囲気になると、あえてそこから逃げていた。
もともと、倫理観の薄い性格ゆえに、誘われて嫌悪感がなければ誰とでもセックスしたが、それは女性相手であって男に掘られる勇気もなく―― 。
―― だって、痛そうだし、それに…… 。
万一それが気持ち善かったりした日には、自分がどうなってしまうか怖かった。倫理観はあまりないくせに、男としてのプライドみたいなものはしっかりと持っていたから、女のように抱こうとしてくる圭とのことを、考えるのが余計に怖かったのだ。
「勃ってきた」
淡々と紡がれる言葉。そして、ペニスから後孔へと移動してくる彼の指先。
「んっ…… んうっ」
「未玖が嫌なら、オーラルでも構わなかった。まあ、いつかは抱くつもりだったが…… 」
堅く閉ざされた肛門を、トントンと指の腹で叩かれ、無意識のうちに未玖は不自由な体を捩って逃げようとした。
「ん…… んぐぅっ!」
すると、嗜めるように舎弟の一人が胸の尖りを捻り上げ、同時に敏感な亀頭の部分を他の舎弟に掌で強く擦られる。
もう、気持ちがいいのか痛いかすら分からなくなりそうだった。
「散々我慢したけど、オトコに手ぇ出しちゃダメだろ」
「ぐ、うぅっ」
滑り気のない後孔へと、コンドームを纏った指が二本同時に挿し入れられ、痛みと恐怖に涙を流すが、もちろん止めてなどもらえない。
まさか、こんなに彼を怒らせているとは思ってもいなかった。なにせ、二人きりでいる時ですらほとんど会話も無かったから、無理に付き合って貰ったという引け目も相まって、本心を尋ねることもできないままにここまできたのだ。
男と関係してみようなどと考えたのは、ほんの出来心だった。ゲイの友人とバーへ行き、恋愛相談をしているうち、
「とりあえず、抱かれるのに拒否感あるなら俺を抱いてみる? 俺今フリーだし、未玖なら後腐れなさそう」
と、友人のほうから誘ってきた。
だから仕方ないという訳でもないが、自分なりに二人の未来を考えての行為だった。
好奇心に負けたと言われれば、それも間違いじゃ無いけれど、別に友人が好きだったというわけではない。強いて言うならば、気持ちいいことが好きなだけだ。
結果、ホテルへ入ろうとしたところで、どういうわけか圭に会い、そのままこの公園へと連れてこられて今に至るが、未遂だったからいいだろうとは、思っていてもとても言えない。
「未玖の反省はいつもペラペラで信用できない。だから、未玖をオンナにすることにした」
言っている意味が分からない。しかし、聞き返すこともできないから、アナルの痛みを緩和するために、神経を他の場所へ向けようと試みていると、突如陰嚢を強く握られて体が大きく戦慄いた。
「んっ、んっ、んぐぅっ!」
「ここを潰そうかとも思ったけど」
尋常ではない痛みに悶え、のたうつ姿を見下ろして、喉を鳴らして笑った圭は、
「嘘だよ、今はしない。去勢手術はちゃんと病院でしてもらうから安心しろ」
と、さらに物騒な言葉を未玖に告げてくる。
「それまでは、そうだな…… 」
陰嚢を解放されてホッと一息吐いたところで、後孔へと挿入された指が角度を突如変え、内側から腹に向けて圧力を強くかけられた刹那、痺れるような愉悦が生まれて体がピクピクと痙攣した。
「ぐっ、うぅっ!」
「こっちではイかせない。未玖はオンナになるんだから…… 射精は一生しなくていい」
達しそうに震えたペニスの根本を掴んだ圭が言う。
「本当に初めてなんですか? いくらなんでも感度良すぎじゃ…… 」
舎弟の一人がそう呟くと、圭は笑って「寝ている間に開発した」と、何でもないことのように答える。
確かに、彼と一緒に過ごしていると、大抵眠気に襲われた。もしかしたら、飲み物になにか混ざっていたのかもしれない。
「ここを指で押してやると、寝ていてもイイ声で喘ぐから、我慢するのが大変だったが…… 」
「ん、ぐぅっ」
指がズルリと引き抜かれ、代わりにもっと大きなものが後孔へと宛がわれるのが分かったが、様々な事が起こりすぎて、思考がついてこなかった。
「初めては、意識があるときじゃないとつまらないからな」
「ん…… ヴゥッ!」
狭い後孔をこじ開けるように切っ先が中へ入ってくる。
少しの間、肛門付近で動きを止めた圭だったが、「やっぱり痛いな」と低く呟くと、いったんそれを引き抜いた。
「どうぞ」
舎弟の一人がポケットからボトルを取り出し圭に手渡せば、蓋を開いた彼はそのまま、ボトルの口を未玖の後孔へと突き立てる。
「ん、んぅっ」
冷たくドロリと滑りを帯びた液体が、アナルを満たしていく感覚に、未玖がブルリと身震いすれば
「寒いか? 」
と圭が尋ねてきた。
何がなんだか分からないまま未玖がコクリと頷いた刹那、ボトルの口がアナルから抜かれて再びペニスが入ってくる。
「うっ…… うぅっ!」
ローションの滑りを借りて一気に奥まで貫かれ、快感としか言いようのない甘く痺れるような愉悦に、不自由な体を反らせて未玖は体を痙攣させた。
さらに浅い場所にある快楽のツボを切っ先で強く押されれば、考えることを放棄したように頭の中が真っ白になる。
「う、あっ、ああ…… ん」
女性相手とは全く違う種類の愉悦に飲まれた未玖は、口に貼られたガムテープを剥がされたのにも気づかなかった。
「あ、あ…… 俺、おかし、おかしい…… んむぅっ」
必死に不安の言葉を紡ぐが、すぐにキスで塞がれる。達したような感じはするのに、射精のものとは違っていた。
圭が根元を戒めているから射精しようにもできないのだが、未玖はそれに気付いていないから無意識に腰を振り始める。
「はぁ…… ん、圭、こわい…… こわい」
キスの合間に訴えるけれど、取り合ってなど貰えなかった。
穿たれる度に臍の奥から絶頂感が襲ってくるから、未玖の体は痙攣し続け、勃起しているペニスがフルフルと前後に揺れる。
「未玖、ごめんなさいは? 」
「ごめ…… さい、も、しない。しないからぁ」
殺さないでと訴えると、圭が喉でクスリと笑った。
「殺しはしない。未玖がいい子じゃないから、躾るだけだ。いい子になりたいだろ? 」
「ん、んぅ…… なる、なる!も…… だしたい」
ローションに含まれている催淫剤の効果なのか、それとも元々の性質なのか、子供のように強請る自分を客観的に分析することももう出来なくなっている。
「未玖、違うだろう? 」
「ひっ…… やぁっ」
突然ペニスを平手で叩かれ、未玖は体を戦慄かせた。だが、体内にある彼のペニスは止まることなく悦い場所だけを穿ってくるから、それすら快楽と体が勝手に勘違いしてしまう。
「あまり騒ぐと人が来ます」
舎弟の一人が低く告げるが、
「見られてもいい」
と圭は静かに言い放った。
「未玖、お前はこれから一生射精しない。オンナは射精しないだろ? 」
「しゃ…… せい? 」
「ああ、もし溜まったら、ここから管を挿して排泄させてやる」
「や…… ああっ!」
尿道口に爪を立てながら、教え込むように言われた言葉に、朦朧としながらも未玖が「嫌」と返そうと口を開けば、再びペニスを激痛が襲い、声は半ばで悲鳴に変わる。
「こっちでもイけるようにしないとな」
「あっ…… あう…… ん」
ぽってりと腫れた乳首を舐められ、あえかな声が漏れだした。体中が性感帯になったみたいな状況の中、きちんとした思考なんてもはや出来るはずもない。
「約束出来るか? 」
「する、する…… しゃせい、する」
「バカだな。しないだろ」
「いっ、あうぅっ…… しな、しないから…… もう、ゆるひてぇ」
自分が何を言っているかも分からなくなったまま、圭に言われた言葉をただ、未玖は何度も繰り返した。
***
「ただいま」
マンションへと帰った圭が、リビングへ入っていくと、部屋の隅でうずくまっている小さな塊が視界に入る。
「未玖」
ことさら優しく声をかけると、弾かれたように体が揺れ、それからゆっくり動いた未玖がこちらへ向かって這ってきた。
「おかえりなさい」
涙で潤んだ大きな瞳。耳を澄ませばモーター音が聞こえてくるから、朝取り替えた電池はまだ切れてしまってはいないのだろう。
「いい子にしてた? 」
「してた…… 圭の帰り、ずっと待ってた」
舌っ足らずに答える声は、淫らな艶を帯びている。
長い間、外へ連れ出していないから、肌はすっかり白くなり、自分が嵌めた赤い首輪が似合うようになっていた。
「ここも、ずいぶん熟れたな」
胸の尖りに取り付けておいたクリップ式のローターを外しながら甘く囁くと、未玖は体を捩りながら胸を脚へとすり付けてくる。
「今日は自分で触らなかったんだな。偉いぞ」
頭を撫でて褒めてやれば、嬉しそうに微笑んだ。
「圭、おっぱい…… 痒い」
「それだけ? 」
「白いおしっこ…… したい」
上目遣いでこちらを見ながら、教え込んだ通り体を仰向けにして寝そべったから、貞操帯に加えてブジーまで差し込んである未玖ペニスは圭の位置から丸見えとなる。
彼をここまで躾るのには、思いの外時間がかかった。結果、アキレス腱を切断したから歩行は困難になったけれど、今こうして素直で可愛い姿を見せてくれるのだから、苦労した甲斐があったというものだ。
以前より細くなった体を、抱き上げてからソファへと座り、合い向わせになるように未玖を膝の上へと座らせる。
「あ…… いく、いく…… 」
鍵を使って貞操帯を外してから、尿道を埋めるブジーを抜き取り、カテーテルをゆっくり挿入していくと、可愛い声が鼓膜を揺らし、拙く腰を降り始めた。
「イっていいぞ」
低い声音で囁きながら、目の前にある胸の尖りを強く吸えば、たったそれだけで達したように未玖の体がビクビクと跳ねる。
「けい…… すき…… んぐぅ」
うわ言のように愛を紡ぎだす唇を口で深く塞ぎ、勃ちあがっている己のペニスを取り出して彼を貫けば…… 尿道から飛び出している管をせり上がってきた白濁が、用意してある銀の器へと糸を引きながらタラリと垂れた。
End
※これでおしまいですが、続編があります。
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