すぐに司は戻ってきて手にした濡れタオルで更に身体を拭ってくれた。 「……俺、淫乱かも」 「………急にどうした？」 「だって……一緒にするの、癖になりそう……」 「……ふっ、じゃあ俺も淫乱だから問題無いな」 自身の身体も拭き終えた司は俺の身体を抱え込むようにしてベッドへと沈んだ。 「………司」 「ん？」 「つーかーさ？」 「何だよ」 「へへ、本当に怒られないんだなって」 「……あの時は悪かった」 「いいよ。それはもうとっくに謝ってもらってるし。それより名前で呼ぶの変な感じするな。でも嬉しい」 司は俺を見て、作った拳を自身の口元に当てた。 「何？」 「いや………」 「何だよ？気になるじゃん。」 「………ちゃんと男だって分かってるんだけどな。どうしようもなく可愛く見えるから困ってる」 「なっ………」 「愛しく思うってこう言う感情の事なんだな」 「は、恥ずかしい事言うなよ……」 「気になるって言わせたのお前だろ」 数秒睨み合って、それから二人して笑った。 「そう言えばさっき長谷さんに何て言われたんだ？」 「ああ、ダブルデートしてくれって」 「……ダブルデート!?え、相手は？」 「お前の友達だろうな。」 「郁弥？え、て事はやっぱあの二人って……何でどーして、よりによって長谷さん!?」 「知らん。直接本人に訊けばいいだろ」 「そうだけどさぁ……怖くて訊けない」 いや悪い人ではないと思うんだけど……。 弄ばれてないか不安………。 悶々と思案に耽っていたら、鋭いデコピンが飛んできて意識を引き戻される。 「痛っ………もう！アンタのそれ痛いんだから加減しろってば！」 「他の奴のこと考えてる方が悪い」 「えー…変なとこでヤキモチ妬きなわけ？」 「だったら？」 うーわ、開き直ったよ。 「ったく……あ、そうだ。今度さババロア作ってよ」 「ババロア？何でまた……」 「末松さんに食べさせたことあんだろ？美味しいって聞いた」 「ああ……そんな事もあったな…。紗奈に作らされた気がする……」 「末松さんが食べた事あんのに、俺が無いってのはダメ。俺、誰よりもアンタの事知ってたい」 「………お前も変なとこでヤキモチ妬きだな」 破顔した司はくしゃくしゃと俺の頭を撫でて、今度なと近い未来の約束をした。 「………陽翔、」 「んー……？え!?今、名前……」 「――出会えて良かった。感謝してる」 あれ、この口の動き見覚えある………。 あ、そうだ。あの墓参りの帰り…… 電車でかき消された時と同じ……。 「それから、愛してる」 もしここが全てが繋いでくれた運命の終着地点なのだとしたら、 その全てに誓って、俺はこの人を……。 「――絶対に幸せにしてみせるから」 ――END――