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第30話
リョウさんがマジマジとって感じで僕のソコを見ている。
その視線というか目チカラの強さに焙られたようにさらにぷっくりと凝ってしまっていて、布地に擦れて痛いような甘いような感触が強くなる。
熱く甘美な疼きに苛まれて歩みを進めるのも物凄く感じてしまっていた。
「ユキが特別ってわけでもない。男でも敏感な人間は弄られればそうなるように出来ているので」
リョウさんが言い聞かすような感じでゆってくれた。何だかお母さんが子供に言い聞かすような感じだったんだけれど。
そしてリョウさんは僕のことを物凄く世間知らずだと思っているんだろうな……って。
まあ、お店での買い物の仕方を知らなかったのも事実なんで、それはそれで仕方ない。
リョウさんは何だか「無知な僕」のことを気に入ってくれているって感じた。
動画とかを見て知っていたとはどうしても言えない空気が二人の間に流れている。
路地裏の細い道だったんだけれど、この辺りは「同性」同士が愛し合う秘められた場所のせいかもしれない。
世の中では「LGBTを理解しよう」とかの運動も盛んだって何かで読んだけれども、そんなに簡単に偏見の目がなくなるわけでもない。
だから表通りではなくて、こういう路地に面したところでひっそりと営業している店もあるんだろうなって思ってしまう。
お客さんが入りやすいようにとゆう工夫だろうなって。
そういうネオンの看板に照らされた僕の身体をリョウさんがしげしげと見ているのも何だか恥ずかしくって穴が有ったら入りたい。
その照れ隠しというわけでもないけど、ワザと知らないふりを装ってこの空気を変えようと思った。
そうじゃなかったら、何だかもっと身体がおかしくなりそうだったので。
「『男でも』って――女性はそれが普通なの?」
案の定、リョウさんは何だか感心したような視線を僕の目に当ててきた。
目が合って心臓が「リョウさん」って音を立てていたけど見つめ合えるだけで物凄く嬉しい。
喩えてゆうなら、シンデレラの限られた幸福の時間をもっと延長したくってリョウさんていう王子様と一緒に街を歩く時間はネオンよりも鮮烈な光を僕の心に灯してくれていたし。
「ああ、そうだが。ただ、やはり個人差は有るらしいし……。ユキの場合は催淫剤を塗られただろう?
だからそういう感度が上がってもおかしくない。
デニム地の方がもっとごわごわしているだろう?あれを着た方がもっと悦楽が得られる……。ユキは二次会でお金を稼ぎたいのだろう?だったら、こっちで充分感じられるようにしておいた方が良いんじゃないか?」
あまり覚えてはいないんだけど、舞台に上がっている最中に飛んだヤジのように卑猥な感じとか面白がっているふうな気配は毛頭ないような、親身になってにアドバイスをしてくれるような口調が嬉しい。
確かに乳首の話をしているんだけど、性的なニュアンスは全くと言って良いほど感じなかった。
でも、事務的とかお役所的な対応というふうな様子でもなかった。
そういうリョウさんのさり気ない優しさがとっても嬉しい。
ただ、男らしい凛々しさに溢れたリョウさんの指が僕の乳首の辺りに次第に近づいて来た。
触れられるって思っただけで乳首からお尻にまで甘い毒のような電流が奔ってしまう。
「ああっ……んっ……イイんだけど……。店の中じゃなくてここでするの……」
長くて綺麗な指で触られたら僕が僕じゃなくなってしまいそうなヘンな感覚を覚えて、必死に自分を保とうとした。
それに、舞台の上だけの触れ合いだと思っていたのに、こんな人の気配のない場所で感じる場所を触られていると「本物」の恋人同士になったような気がする。僕の気のせいだろうけど。
リョウさんが何を思っているのかな??って物凄く不思議で、乳首を触られて涙目になってしまっている僕の目を誤魔化そうと必死に瞬きをしてしまった。
そうしたら、たまたま大きく目を見開いていた瞬間にリョウさんと――それまでは僕の目じゃなくて乳首を見ていた――視線が合った。
指で弾かれるたびにヒクリと身体が反応してしまう、物凄くヨくて。
この場所で――と言ってもリョウさんには何のメリットもないからしないだろうけど――リョウさんと人知れず愛の国に来てしまったような不思議な感覚に紅色の眩暈がした。
何だか本当の恋人同士みたいだった。
僕の勘違いでも思い上がりでもイイから、そう思い込みたい。そんな詮無い思いを抱いてしまう。
このまま最後までしてもらったらどれほど幸せな気持ちになるだろうかと思うだけで胸がピンク色の靄で膨らんだような気がした。その刹那の幸せ、そしてタイムリミットもあるという残酷な現実は少しの間忘れてしまって浸りたいと心と身体でそう思った。
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