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第64話
学校に行く途中、優介が突然俺に言った。
「そういえば、明日遠足だよね?何持ってく?」
「はぁっ?」
優介の言葉に耳を疑い、聞き返す。
「え、この前言ってたじゃん。遠足で川の中で遊ぶよーってやつ」
「.......言ってた気がする」
お菓子とか持って行きたくね?とはしゃぐ優介を尻目に、バイトの時間までにバスが帰れるかどうかを俺は心配していた。
「大丈夫だと思うよ?」
俺は休み時間に廊下を歩いていた担任、仁科先生に尋ねる。
仁科先生はいきなり質問に来た俺に驚きながらも、ニコニコしながら答えてくれた。
「...分かりました、ありがとうございます」
「いえいえ~」
仁科先生は優しく笑い、ひらひら手を振りながら歩いていった。
放課後。
「入るぞ」
保健室のドアを開けると、またいつもの女子5人組が岬に群がっている。
コイツら部活はやってねぇのかよ。
.....俺が言えた話じゃないけど。
「おい、ベッド借りてるぞ」
俺は群れの中心にいる岬に適当に声をかけ、隣の空間のベッドに腰をかけた。
フワリ、と軽く香った匂い。
岬がさっきまでここで寝ていたようだ。
「......すん、」
スンスンと枕に顔を埋め、匂いを嗅ぐ。
......なんで寝てたんだろう.....?
「.....なーにしてるの」
「っ!?....女子は?」
思ったよりも近くから声がして、肩を震わせた。
「冬夜が寝れないから追い出した」
「っ、......具合悪いヤツはちゃんと相手しろよ」
「はいはい」
じゃあおやすみ、と岬は隣の部屋に戻って行った。
.....俺は岬の匂いを吸い込みながら、目を閉じた。
自然と意識がなくなっていった。
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