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心も知らず 第15話
職員室へと上がる階段では、追い抜いて行った祐志に「オラオラ」と蹴り落とされそうになりながら――いや、マジで死ぬかと思ったって。
それでも気分は上々だった。
懸命にやったから、『なんらかの痕』として、今この『瞬間』が残ってんだよなぁ……。
大城の顔を思い出しながら、明日はもう少しデッサンに気合い入れてみるかと、闇が降りてきた空を見上げた。
「いつの間にか真っ暗になってんなー」
校舎を出た途端、隣で呟いた祐志に「そうだな」と頷く。自転車置き場へと2人で向かいながら、静寂の中、2人で踏む砂利の音を、只黙って聞いた。
――そうだな。闇ってのも案外、悪くないや。
まったく同時に響く足音に、祐志からは見えないのをいい事に、俺はいつまでも1人、こっそりと笑っていた。
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