51 / 52
しづこころなく 第20話
違うのか? と顔を覗き込むと、弘人は驚いた顔のまま何度か頷いた。
「じゃあいいじゃん」
俺はコーラを開けて、ゴクリと咽喉に流し込んだ。
「お前が買ってくれたこれは、マジで美味いけど」
なんだそれ、と笑う弘人に、俺はさっきの言葉の『お返し』にと言葉を綴った。
「誰のでもいいって訳じゃねぇけど、俺は誰かの『特別』になんの、結構好きだぜ。『初めて』貰うのもな。俺だけでいいじゃん。お前の『遠慮しなくていい奴』はさ。他の奴には今まで通り、気ィ遣ってずっと生きてろ」
「エッラソー」
クスクスと笑っていた弘人は、ハタと何かを思いついたように、悪戯っぽい瞳をこちらへ向けた。
「なんかー、『初めて』貰うの結構好きってヤラシくない?」
「ヤラシくねぇよ」
「えー? 祐志君は今までにいったい何人の女の子の『初めて』貰ったワケ?」
興味津々に訊いてくる弘人に、低く一言「死ね」と返してやる。
一瞬フンッと鼻に皺を寄せた弘人が、「ここで問題」と突然人差し指を突き立てた。
ともだちにシェアしよう!