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蕗口の目的が分からない。バスでの移動時間は確かおおよそ1時間30分。この空気感耐えられるだろうかもう不安になった。
「いつもそんなきっちりマスクしてたっけ?」
いつももなにも、蕗口とは会うのがまだ2回目だけど。と思いながら鼻まで覆っていたマスクを無意識に更に押さえた。俺の様子に目を細めて、蕗口は手持ちのカバンからペットボトルのお茶を取り出してぐびぐびと飲む。そんなに飲んでお腹大丈夫なのかな。
「それってさ、顔隠したいからつけてんだったらあんま意味ないよ」
はっとした。これの目的に気づかれてしまっている。そう言えばあの時、わざわざ前髪を戻したのはあの時点で察したということだろうか。
「知ってる?マスクで隠れた口元って、勝手に良い想像し易いらしいよ。俺アンタの目、見てるから逆効果かもね」
マスクは意味がない、引きつけやすくもなるから気をつけろ。金剛先生と似たようなことを言うんだなあ。とぼんやり思い出した。先生の指摘は正しい。
「て言ってもその下もう見てるけど」
そう、ほとんど素顔を見られたも同然で、それもあんな形でだ。蕗口自体に悪意が無かったにしろ、これでいつものように言われてもプラスからマイナスになったとは言えないのではないか。だとしたらいっそ構える必要なんて本当はないんじゃないのか?
「……君は、俺のことどう思ってるの」
「どうって?」
不思議そうな顔で聞き返されて、困る。
「知らん振りしていた方が、お互い良かったんじゃないのか」
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