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 舌先に甘い感覚が溶けるように広がると同時に、目の前に何かが迫っていた。あいつの顔が視界を占めている。  思わず砂糖菓子を噛み砕き、頭部と胴体に分裂してしまった。 「あーあ。残念」  音を立てながら食べているその姿は、本当に残念だと思っていることが伝わってきた。  そんな小細工をしなくたって俺はあいつのために、自分に似合わないようなことだってできる。  口には出さないけれど、そんな想いと共に強引に唇を重ねた。触れ合うだけの行為のはずなのに、蕩けるように熱い。 「これくらい……」 「分かってるよ。でも、たまには甘く蕩けるような触れ合いもしてみたいなって。せっかく美味しいケーキを用意してくれたし」 「そうか。だったら、これ食べてからな」 「やったー」  いつまでもあいつとの時間があるはずなのに、待ち遠しくてしょうがない気分にさせられていた。  そして気付けば、せっかくケーキに合わせていた紅茶がすっかり冷めてしまった。  熱は全てあいつに吸われてしまったのだろう、と責任をなすり付けつつ、俺たちは最高のクリスマスティータイムを過ごした。

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