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「はい、少々お待ちください」
水城は、立ち上がり一礼してショーケースでなく裏の冷蔵庫へ向かう。ガチャリと開ければそこには、ラッピングされた小箱が一つ。大人しく主人のお迎えを待ち続けてくれていた。
それを大切に手に持ち、有馬への元へと水城戻る。
「お待たせいたしました。こちら本日限定、一粒だけの新作『ロゼ』です」
差し出す水城の心臓の鼓動は、緊張から激しく打ちつけていた。
両手で優しく水城の手の中から小箱を受け取った有馬は何かを察したように「ありがとうございます」と言いながら、その小さく結ばれた赤いリボンを解く。
バカっと有馬が開ければ、中からはジュエリー型のチョコが一粒現れた。
「ルビーショコラの中に薔薇のガナッシュを閉じ込めました。これ、要君の為に作った世界に一粒のチョコです。ロゼ、花言葉は愛。良ければ受け取ってください」
真っ直ぐ真剣な眼差しで水城は秘めていた思いをぎゅっとチョコレートに込めて、告白をする。
白い指先で摘まれたその思いは、一口。
有馬の口の中へと入っていった。
「んっ…!!美味しい!」
「その幸せそうに食べる表情、やっと見れました。美味しいと言って頂けて、とても光栄です」
もう一口、有馬はチョコを頬張りたった一粒の特別な宝石は二人の目の前からあっという間に消えた。
「ほんっとうに美味しい!酸味とフルーティーな甘みの調和する中に薔薇の香りがフワッと鼻に抜けて……こんなの、ほんと失礼かもしれないけれど今まで食べてきたどのチョコよりも一番に美味しい!」
食べた感想を語る有馬は、今まで見てきたどの笑顔よりこの瞬間が可愛かった。心臓が鼓動で張り裂けそうな気持ちは水城にとって初めてだった。
「水城さん。貴方からの愛。受け取りました」
有馬が、冷静を取り戻すと改まったように二人向き合い、はっきりと思いを言葉にする。
水城は気持ちが抑えきれず……いや懸命に押さえ込んでも限界を超え器から感情が溢れてしまい、腕を伸ばしそれはもう優しく抱き寄せて近づく有馬の顔を細目で見つめながらチュッと口づけを一つ落とした。
「愛してる」
それはもう二度と忘れられない、チョコと薔薇の甘くて蕩けそうに美味しいキスだった。
fin.
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