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第6話

春菜は、うつ伏せのまま、反対側を向いている。 泣いているのか。 黙ったままだ。 「春菜、すまなかった! まじで反省している。本当にすまない」 「……」 「もう二度と、こんなことはしない。だから、許してくれ!」 「……」 ああ、春菜との友情もこれで終わりかもしれない。 でも、俺は後悔はしていない。 たった、一回のセックスだったけど、一生に一度のセックスだ。 愛する春菜とのイブの思い出。 俺が目をつぶっていると、春菜の声が聞こえた。 「仁……オレはお前の彼女の代わりなのか?」 「えっ?」 春菜の真意がよくわからない。 「どういう意味だ? 春菜」 「だから、仁。お前は今日、彼女に振られて、その身代わりなのかって聞いている」 「ちっ、ちがうぞ。春菜。俺は、お前を抱きたくて抱いた。彼女とか関係ない」 「本当か?」 「ああ、本当だ。当たり前だろ。じゃなきゃ、こんなに激しいセックスできないだろ?」 「ふーん。そうか……オレを抱きたくて抱いたか」 こころなしか、春菜の声が明るくなったような気がする。 機嫌が直った? 気のせいか? 春菜は口を開いた。 「仁。許してやってもいい。オレとお前の仲だ」 「おお、まじか?」 「ああ、だけど、2つオレのお願いを聞いてくれ。それが条件だ」 「もちろんいいぜ。俺ができることならな」 やった。 春菜は許してくれる。 俺はひとまず肩をなでおろした。 春菜は、ようやくこちらを見た。 泣いてなんかいない。 むしろ、すっきりとした表情だ。 「仁、一つ目のお願いだが……」 「ああ、なんだ? 言ってみろよ」 「お前が彼女にあげようとしていたプレゼント。あれをオレによこせよ」 「へっ? プレゼント?」 「ああ、さっき、待ち合わせ場所でスッと隠したやつ。あれ」 「あっ、あれか……」 あれは、春菜の為に用意したプレゼント。 しかし、いまのタイミングで渡すのは、ちょっとはばかれる。 無性に恥ずかしい。 でも、春菜は、そんな俺を見て、彼女へのプレゼントを出し渋っていると勘違いしているようだ。 「嫌とは言わせないぜ。お前の彼女は今日こなかったんだ。そいつをもらう資格はないはずだ」 「まあ、そうだな。今夜は、お前が俺の彼女、いや恋人だもんな」 「ぶっ! 恋人? オレがか?」 「何笑っているんだよ。春菜。俺とセックスしただろ? もう、恋人だぜ」 「ふははは。そっか。違いない」 「ふふふ、ははは」 緊張の糸が緩んだ。 いつもの、俺達の雰囲気になりつつある。 俺はジャケットのポケットから小箱をとりだし、ポーンと春菜に投げた。 「ほら、それだ。開けていいぜ」 「仁が彼女にあげようとしたプレゼントか。楽しみだな」 春菜は舌なめずりをしながら無造作に箱を開ける。 そして、中身を見ると、目を見開いた。 「あっ、これって!? あのフィギュアじゃないか? 一体どうして……」 「ははは。もう、隠すこともないな。春菜。これは、もともとお前に上げようとしていたものだ」 「オレに? どうして、お前が?」 「わからないか? 実は俺には彼女はいない。それはな、春菜。俺はお前をずっと好きだったからだよ」 「なっ、なんだって! うそだろ? 仁」 「本当さ。だから、プレゼントは最初からお前のものだ。受け取ってくれ」 「仁が、オレのことを? 好きだった? まじか……いつからだよ!」 「夏からだよ。ははは。分からなかっただろう?」 「夏……そんな前から……そっか、お前は、オレのことを好きだったのか」 「ああ、でも、俺はお前と彼女の恋仲を邪魔をするつもりはない。恋人同士も今夜限りのつもりさ。そうだな、お前の彼女には悪いが、今夜来ないのがいけないってことだな。ははは。さぁ、俺の告白を聞いたところで、2つ目のお願いを言えよ」 春菜は、すこしぼおっとしていいたが、俺の言葉にビクンとした。 「おお。二つ目か」 「さぁ、なんだ?」 春菜は、ニヤっとしながら言った。 「もう一度、オレとセックスしてくれ。いいだろ?」 「ぶっ! どうしたんだ? 春菜。もう一度セックスって」 「どうもこうもあるかよ。分からないのかよ?」 「何がだ?」 「オレも、彼女なんていないんだよ」 「へっ?」

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