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王子様の正体(6)
「俺だって、できることなら話しかけられたくないよ」
「でもお前、答えようとしてただろ」
「だって、」
「だってじゃねぇよ。何も話すな。女子と関わらなくていいし、男子も無理に相手にしなくていい」
「……意味分からない」
「単純な約束だろ? 無視すればいいんだから」
「……でも、」
「くっそ、うるせぇなお前。……俺以外と話すなって言ってるだけだろ」
……何て奴なんだ、大魔王環くんは。俺以外とは話をするな? そんなの無理……なわけないか。基本的に俺は、環以外とは話ができないから、話しかけられることは避けられないとしても自分から話をしたり、返事に関してはそれが可能だ。でもさ、そこまで極端にしてしまうと、環のイメージが悪くなってしまうだろう?
それなのに、そんなことを言うのか。
ひどい扱いのくせに、自分だけ都合の良いように言うんだから。何が単純な約束だ。ただの命令じゃあないか。
悔しくなって、これは態度に示して反抗してやろうと考えたけれど、視界に環の真っ赤になった耳が入ってきてやめた。黙って何も言わなくなってしまった環。顔は斜めを見ていて強引にのぞき込まなければ身長差のせいで見ることはできないけれど、短髪だから耳だけは見えている。唯一感情の分かるところ。
俺に怒っていてこんなことを言ったのかと思ったけれど、どうもそんな感じじゃあない。だって怒る時は環は黙らないから。それならば、赤くなったこの耳は何を教えてくれる? 環が照れているってこと?
あああ、どうしよう。つられて俺まで照れてきた。自分自身は本当に単純すぎると呆れてしまう。だってさ、よくよく考えてみれば、環に言われたことは相当恥ずかしいことじゃあないか? 自分勝手な解釈なのかな? 俺以外と話をするなってそれは、環の独占欲ではなくて、俺の勘違い?
「環、」
戸惑いながら名前を呼んでみたけれど、さすがは環。俺のおでこを指で弾くと、「家に帰ったら覚悟しろ」と一言。そして、そんな簡単には優しくしてくれないよなぁと、落ち込んだ俺の頭を叩いてさらにとどめを刺した。
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