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 薬を飲んだ蓮は、ベッドの縁に腰掛けたまま、黙っていた。  すぐにはおさまらないから、暗闇の中で、沈黙と咳。  俺も黙って横に座っていると、蓮が、ぽつりとつぶやいた。 「なんで咳してんだろ。きょう別にストレスとかなかったし、弓弦と一緒に寝てんのに。ゴホッ」 「蓮のせいじゃないんだから。おさまるまでちょっと待ってよ?」  手を取って握ると、蓮も、ゆるっと握り返してくれた。 「ただ好きなことがしたいだけなのになあ」 「うん」 「本当はさ、建築のこと勉強すんのが大好きだし楽しいし、自覚としては、シンプルにそれだけなんだよ。なのに、ゴホッ……体は勝手にストレス溜めて、オレの思い通りにさせてくれない。寝かせてくれよ。そしたら普通に学校行けるんだから」  自分の気持ちとズレた体調の悪化に、いら立っているようだった。 「そんな風に自分を責めないで」 「嫌になる……ゴホゴホッ」  うつむいて咳き込む蓮の背中をさする。  咳してるところに口をふさいだら苦しいかなとも思ったけど、触れるだけのキスをしてみた。 「少し安心する?」 「ん。する。もうちょっと」  ちゅ、ちゅ、と音を立てながら口づけると、蓮の手が、俺の背中を探り出した。 「弓弦と繋がったら安心するかな」 「試したらいいよ」 「ケホッ……」  咳はしつつ、蓮の手は明確に、オレの体温を上げようとしていた。  準備のため、一旦離れてお風呂に向かう。  結局、いま蓮のために俺ができることと言えば、こんな風に触れ合って、安心させてあげることくらいかなと思う。  お互い何も身につけていない状態で、ベッドの上で向かい合った。  蓮には横になってもらって、俺が蓮のペニスをなめることにする。  まずは口に含んで何も力入れずにそっと頭を上下してみると、蓮は俺の頭をなでてきた。 「気持ちいい?」 「ん。あったかい。コホッ……ん」  咳と吐息が混じっていて、大丈夫かなと心配になる。  苦しかったら言ってと伝えてあるので、とりあえず、止めることなく口淫を続ける。 「弓弦、こっちにお尻向けて」 「え?」 「指でほぐしてあげる」  されるところを想像して死ぬほど恥ずかしくなったけど、蓮の好きなようにしたいと思い、体の向きを変えて、蓮の顔の前にお尻を突き出した。 「かわい」 「んん……っ」  たっぷりローションを塗られ、クチュクチュと音を立てながら中を探られる。 「んん、んッ、はあ、……んん、」  必死で口での愛撫を繰り返しながら、与えられる快感を受け止める。  咳き込むたびに手は止まるけど、良いところを押されるとどうしても甘ったるい声が漏れて、恥ずかしさもあいまって、かなり興奮してきてしまった。 「もういいよ。中、やわらかくなった」  蓮に告げられ、体勢を戻すと、そのままゴロンと寝転がされた。  正面、顔を合わせながら、蓮の侵入を感じる。 「ん……ぁあ」 「ゆづ、コホッ」  少し苦しそうな表情の蓮の頬をするりとなでて、そのまま首の後ろへ手を回す。  ゆるゆると動き出した蓮は、しばらくして、ピタリと止まった。 「蓮? 大丈夫? 苦しい?」  心配して聞いたけど、蓮は返事をしなかった。  繋がったまま腕のあたりをなでていると、蓮が、絞り出すような声で言った。 「咳止めるためにエッチしても、全然優しい気持ちになれない」 「蓮?」 「弓弦のこと道具か薬みたいに扱うのは、大事にできてない気がしてやだ」  そして、ゴホゴホと咳き込む。 「俺、大事にされてないなんて思ってないよ? 蓮が安心してくれたらうれしいし、俺だってちゃんと気持ちいい」  両手を広げると、蓮は体を倒して折り重なってきた。  そっと背中に手を回し、抱きしめる。 「俺、自分のことでいっぱいいっぱいで、現状何もできてないじゃん。蓮の安心材料になれてることだけが、生きてる救い。だから、俺のこと抱き潰して、疲れて寝たらいいよ。俺はそれで本望。どう?」  蓮は体を起こした。 「いいの?」 「うん」  俺がうなずくと、蓮は、中指と人差し指を俺の口の中に入れた。  唾液を含ませて、絡みつくようになめる。  口から抜くと、ぬるぬるとした指を俺の乳首に当てて、こねはじめた。 「ん……」  うっすら目を開けると、蓮は、切なそうな目をしながら、ゆるゆると腰を動かし始めた。  手つきのいやらしさと中の質量で、ぱっと顔が熱くなる。  蓮が、かすれ声で言った。 「気持ちよくしてあげる」  乳首をつまんだりぐりぐりといじりながら、中を突いてくる。 「ん、……はぁ、あ……」 「これ気持ちいい?」  中をかき回すような腰つき。 「ぁあ、んン……ッはあ」 「気持ちよさそう……コホ、」  知らない感触で混ぜられると、だんだん息が上がってくる。  蓮の手が、そろそろと下に伸びてくる。どこを触られるのか――中心に触れて欲しいと期待してしまう。  ねだるように腰を浮かせると、両手で腰骨をがっちりホールドされた。 「ぅあ……れん、ん、はぁ」 「なあに?」 「ん、んっ」  言葉にするのは恥ずかしくて、ちょっと顔を背ける。  蓮は、少しスピードを早めて、奥を突いてきた。 「っあ、はあっ、ん……きもちい」  控えめな空咳を繰り返す蓮の目は、少し熱がこもっていた。 「前、触っていい?」  こくこくとうなずく。  やんわりと握られたら、そのあたたかさだけで、あられもない声が出た。  中を規則正しく突きながら、前は、粘土をいじるようにぐにぐにと扱いたり少し潰したり。 「弓弦、気持ちよさそう、ケホッ……ケホ」 「はぁ……っ、ん」 「先走りこぼれてる」 「ん、はずかし、ぁあっ」 「可愛い」  扱く手が強く、速まってきた。 「可愛くイくとこ見せて」 「はっ、ん、……んっ、はぁ」 「オレも気持ちよくなりたいな」  入口の良いところをえぐりなら奥へ。 「ぁああっ、んッ……はぁ」 「弓弦イくとき、中がひくひくしてすごい気持ちいいんだ」 「あ……ん、れ、蓮っ…」  呼ぶ声が上ずって、勝手に背中が弓なりになる。 「ぁああっ」  良いところに当たって、訳が分からなくなってくる。  咳払いをひとつして、手の中のものをゴリゴリとこすりつつ、奥へガンガン当ててくる。  ぶわっと熱がせり上がって、我慢ができない。 「んぁっ、やだ、あッ……イッ、ちゃ、ああああっ……!…………んああッ…!……!」  ビクッビクッと体が跳ねて、濁った液が飛び散る。 「……、イク…………ッ……」  骨が折れるんじゃないかというくらい強く抱きしめられて、蓮も熱を放った。  蓮は、ずるっと抜いたあと、コンドームを結んでゴミ箱へ投げる。  そして、箱に手を伸ばした。 「まだ眠れない」 「いいよ」 「勃たせて」  寝転んだままの俺の顔のところにまたがる。 「なめたらいい?」 「うん」  言われるままに口を開くと、蓮は俺の口にペニスを差し込んで、小さくうめいた。  ぺろぺろと、あめをなめるように舌を動かす。蓮は長くため息をついた。  見下ろす目線が艶かしい。舌に触れているそれが、徐々に固くなってきた。  目をつぶると、蓮は、俺の口に突っ込んだまま、ゆるゆると腰を動かし始めた。  ちょっと苦しいけど、興奮する。  太ももにしがみついて、夢中でしゃぶった。 「ん……弓弦。挿れたい。いい?」 「うん。して」  口から抜くと、するりとコンドームをつけ、やわらかい後孔へ。 「ああ」 「すごい。吸い付いてくる」 「ん、きもち…いい……」  首の後ろに手を回してキスをねだると、期待以上に熱っぽい、深いキスをしてくれる。 「ん、んんっ」 「はぁ……っ、弓弦、」  蓮の咳は止まっていて、あとはもう満たし合うだけだと思う。  奥深くで繋がったまま、胸をなめられ、ペニスを扱かれる。 「ん、……蓮も気持ちよくなること、……して」 「見てたら興奮する」 「……んッ、はぁっ、はずかしい…ッあ」 「弓弦の乳首、可愛いよ。敏感で」  きつく吸われて、声が裏返った。 「や、んン…っ」  だんだん、気持ちいいしか考えられなくなってくる。  体が小刻みにピクピクと跳ねて、蓮にしがみつく指先は、力を込めすぎて白くなっている。 「動くよ」  蓮が、腰を大きくグラインドした。 「ぁああッ」 「……っ、やっば…」  蓮は味わうように、何度も同じ動きを繰り返した。  ひとりでに口からこぼれていく声を、止めることができない。 「ぁああ、あん、はぁっ、…ぁッ、はあ」  達してしまいたい感覚が沸き起こってきて、呼吸が浅くなる。 「蓮、イキたい……」 「ここがいい?」  ペニスを握られ、体がビクッと揺れた。  奥を突かれつつ、前は確実な刺激が与えられていて、変になりそうなほど気持ちよかった。 「……あぁ、もうだめ、ん、んっ、イッちゃう…、」 「オレも。先にイッて」  パンパンと肌がぶつかる音、俺の嬌声、蓮の荒い息遣い。 「はぁ、ん、…イッ、イク……っイッ……っ!ぁあああん!……ぁあっ…!……ッ……!」 「弓弦、……弓弦っ、ぅあ……ッ」    2度達した俺たちは、全てを放り出して、そのまま眠りに落ちた。

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