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いったいどうしてこうなった。
テキトーに仕事をやって終わらせて、てきとーに、適当に。
すべてが適当だったのに、自ら率先して仕事を片付けているこの現状は一体全体どういうことか。
ヤケになって仕事を捌く白乃瀬紅葉 は、こめかみに走る痛みに眉根をきつく寄せ合わせた。
眼鏡の奥に潜む琥珀色の瞳は疲労を滲ませる。
いつもなら可愛らしく結っている淡い金髪は、無造作にひとつ結びにされている。ぼぅっとクリーム色の天井を見つめる。
もともと白い肌が、ここ最近の不健康な生活でさらに青白く、目の下の隈がとてもよく目立っていた。
柔らかい雰囲気に甘い微笑みが人気の紅葉だが、今は微笑む余裕もないほどにやつれていた。
新学期が始まって二週間、学校行事やらイベントやら、処理しなければならない書類や案件がたくさんある。
サボり癖のある紅葉だから面と向かって言えないが、この時期に仕事放棄、しかもほぼ全員というのはいただけない。
家の都合で学園を留守にしていたたった三日間でこの有様。帰ってきた昨日の夜、気紛れに生徒会室を訪れ、デスクに溜まった書類の山を見て愕然とした。
生徒会室に来るどころか登校していなかった自分の机に書類が溜まるのはわかる。だがしかし、なぜほかの役員たちの机にも溜まっている。
誰かひとりでもいい。戻ってきてほしい。そしてさっさとこの溜まった書類たちを片付けて欲しい。
「真面目すぎじゃねーの僕……疲れた怠い帰りたーい……おなかすいたぁー」
かけていた赤縁の眼鏡を外して眉間を揉みしだく。
伊達眼鏡とよく勘違いされているが、紅葉の視力は眼鏡がないと何も見えないほど悪い。
夜遅くまで暗い室内で読書をしているのが原因だとはわかっているが、寝る前の読書はなかなかやめられない中毒性がある。心を落ち着かせるのにはうってつけだし、何よりも精神安定剤のひとつだ。
生徒会室にこれ以上篭っていたくない。ここにいても仕事が進むとは思えない。精神的疲労が溜まっていく一方だ。
寮へ帰ろうと時間を確認する。
「……九時過ぎてるし食堂閉まってるじゃん、最悪」と零した紅葉は寮部屋の冷蔵庫に何か入っていただろうかと思い出す。
小さく呟かれた言葉がしぃんと生徒会室の床に落ち、なんともいえない無力感が広がった。
嘆いていても仕方ない。提出期限の迫った書類をそれぞれのデスクからかき集めて空っぽのスクールバッグに詰め込んだ。徹夜確定の書類の量にまた溜め息が溢れる。
夕食を食べてる時間がもったいないなぁ。冷蔵庫にヨーグルトとか入ってたっけか。
バッグに入りきらなかった書類を腕に抱え、落とさないように細心の注意を払って生徒会室を出た。役員に配られているスペアキーで鍵を閉め、しっかり閉まったのを確認する。
どっと押し寄せる疲労に息を吐き出し、寮へと足を向けた。
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